タイトルは「アニメーターに直接……」としていますが、ここにはその他のクリエイタ──「バンドマン、アイドル、声優、コンポーザー、ライター、カメラマン、イラストレーター、エンジニア、ライブハウスオーナー、キュレーター」なんでも代入できると思います。「個人間」がキーワード。
ひとまずアニメーター(and アニメ業界で働いている方々)を軸に話を進めます。
去年はアニメ界でいろいろと悪い慣習が露呈した印象がありました。
そういった話題を耳にして、現場にいない私含む視聴者ユーザーはどうすりゃいいのか。
不買運動や退会運動にどれだけの効果があるのか。「スタッフへのお布施」と言ってDVDを購入し「二期祈願」と称してブルーレイやグッズを購入する行為の非合理性を説いても、意に反して守りたい土壌が腐っていくんじゃないのか?
グッズを買うよりは、直接会って晩御飯を奢ったほうがいい循環になるんじゃなかろうか……と、ふと思うこともあります。まあ、「グッズの売上で生活できてる人」とアニメーターがそもそも違うんですが。
ともあれ、「直接会う」なんてハードルはとても高い。物理的距離、プライバシーの問題、双方が忙しいなんて場合もあるでしょう。私も杉並区まで出かけるのは嫌です。
いまはITのテクノロジーが発展しています。「直接」のハードルは急速に下がりつつあります。そういう恩恵を利用しましょう。
「アニメーターに直接お金を払えるシステムがあればいいのに」←あるからそれ!
こういう文言をよく見る。
本当に支援がしたいのか、目立ちたがりのジョークなのかはっきりしてほしい。一度でも制作会社か個人相手に送金を試みたり、送金方法について調べたことはあるのかと問いたい。
メルカリ(メルペイ)だったりPaypalだったり個人間送金のできるアプリだってなくはないし、Amazonギフト券なんかは自己負担額まるまる送れるでしょう。多少手数料で目減りするけどFANBOXとかファンテイアとかも支援には利用できるでしょ。
Twitterには口だけ人間が多すぎるし、虚言癖の一種かと疑うくらいの誇張表現があまりにも溢れていて、そういうのが目に入るたびに首がもげるほど目眩がします(実際は真顔で打鍵中)。
まあつぶやきとはそういうものかもしれない。覗きにいって文句を垂れるのは無粋だとも思えます。
あーだこーだ言ってますが、なんにせよそういう意見が広い場に出てくるのは良い面危うい面あれど、これからの試金石になればいいんじゃないかと。ぜひ有言実行、不言実行してもらいたい。
Amazonほしい物リスト(ウィッシュリスト)で物資を送る
Amazonがサービスを提供している「ほしいものリスト」。指原さんが「底辺しかやっていない!」とかおっしゃっていたあれですね。
ユーザーが「ほしいものリスト」を公開することで、それを見た人(たとえば視聴者・ファン)はそのリストにある商品を購入しプレゼントすることができるシステムです。
間にマージンの料金が発生しないところが特筆できるメリット。
最近だと、『お兄ちゃんはおしまい!』を制作した(している)スタジオバインドがほしい物リストをTwitterに公開したりして、認知向上を図っていました。
正確には「スタジオバインドが、」ではなく、「おにまい」のメインスタッフがスタジオバインド宛のリストを作っています。
法人で公開しているのか個人で公開しているのかはリスト作成者の名義からは確認ができないのですが、もしも個人であるならば、「スタジオバインド宛」の看板だけ共有して、贈与税がかからない範囲(110万円)でリスト作成者をスライドさせていくことで、たとえば5人がかりで550万円の支援が届いても非課税の状態が実現できそうです。ちょっと素人考えですが。
すごい脱線しました。
「神作画を見せてくださるアニメーター様に支援したい!(※実際は撮影の力が大きかったりまるまるCGだったりする)」とわざわざツイートするのであれば、こういうものに手を伸ばしたり広める行動をしてみたらどうでしょうか。
ほしい物リストでのプレゼントの流れ
アニメーターを(a)、ユーザーを(u)として簡約すると、
- a)「ほしいものリスト」を作成する
- a)リストのリンクをTwitterなり個人サイトなりに公開する
- u)公開されたリンクから「ほしいものリスト」にアクセスする
- u)リストの中から贈りたいモノを選んで購入する
- ※ uの残高は減り、a宛に荷物が発送される
- a)配達された荷物を受け取る
これでやり取りは終了です。けっこう簡単。
贈る側、受け取る側の両方がAmazonのアカウント持っていないとできないのが多少ネックです。といっても、アカウント自体はすぐに作れるので、そこまで高いハードルってわけでもないです。やろうと思えば今月中にでもできます。
本名バレせずにAmazonのほしい物リストからギフトを送る方法も記事にしているから、そっちも見てください。
メールアドレスを公開するだけでもAmazonギフト券が届く
「ほしいものリスト」は物資を贈るのが基本ですが、そのままギフト券を送ることも出来ます。
ギフト券には物理的なカードタイプもあれば、Eメールでギフト券番号を送る「チャージタイプ」などもあり、送りたい相手のメールアドレスさえわかっていれば「この番号を入力してAmazonギフト券をチャージして」といった具合でメールを送れます。
こないだの作画王グランプリの初代作画王が贈られていた、これ↑とかもそうですね。メッセージ付きのアマギフです。メールアドレスを公開していたから実現したといってもよいです。
ガチャ1回分、コーヒー1本分をかっこいい作画やかっこいい演出やかっこいい音楽やかっこいい効果音やかっこいい撮影やかっこいい美術に回すのってそんなにしんどくないでしょ?
月1でも1クールに1回でもいいじゃないですか。自分の余裕あるなしで決めたらいいと思います。ノブレス・オブリージュごっこみたいな軽い気持ちで。
はい。とりあえずほしいものリストの存在と認識が広がれば、この記事の目的は達成できました。
あとはどうでもいい話。
参加人数がとっても大事だなと思う。一人100円の投げ銭で変わる未来
コミケって50万人くらいの来場者がいるんですよね? 重複する人ももちろんいるでしょうけど、家でテレビ観るくらいなライトな層とか合わせると「アニメが好きな人」はどんぶり計算でも最低100万人くらいはいるんじゃないですか。こないだ大学生の8割がアニメ観てるって記事も見たような。とってもハイカルチャーですね。
与太話は置いといて、50万×100円で5000万円のお金が動く。大した労力もなしに──。
1億人から1円ずつもらえばみんな金持ちになれるじゃん的な詭弁ですし、5000万を全数で割るとまあ悲しいぐらい減るんでしょうが、ある程度は有意義なことが起こりそうな気配はします。このまま何もしないよりかは。
投げ銭や物資支援がスタンダードになったときのいくつかの不安
もしこういう慣例が──ファンの一人ひとりが制作会社や製作会社を介さずに直接的にアニメーターへ還元する行為が──常習化とはいわずとも活性化した結果、グッズやディスクの売上に減少の傾向があらわれた場合に、製作や製作がどういう対処でもって作り手と対峙するのか。
そこは少し怖い想像が働いてしまうところではあります。
というのも、
そういう影響は一切生まれない。
ただ一部の能動的なアニメーターの生活を部分的にバックアップできる猶予があるという話。バーチャル親戚erみたいな存在になって仕送りするようなものです。
早い話がパトロン文化です。チップが馴染まないこの国で、パトロンですってよ。
仮に外的支援が届いても、本来の「上」から降りてくるべき報酬は変わらず、ともすれば「他所から何かいただいてるんでしょ? じゃあ、これくらい(低単価)でも問題ないですよね?」みたいな陰湿な事態になる……とは思いたくないですが、そういう恐怖も感じていたり(悪い人像を作りすぎてる感はある)。
その人の参加を望んでの行為が、却ってその人の処遇を追い込むなんて本末転倒。
もうひとつ危惧しているのは、アニメーターへの助けになるつもりが格差を深めることになる可能性。や、危険性ですかね。
縁の下の力持ちは大抵の人間には視えない
誰に援助を送るかって段階になったとき、判断材料としては「あそこのあのキャラクターの芝居が凄い良かった、ああいうのがまた観たい」とかそんな感じなわけですが、どなたが手掛けたのか正直わからないんですよね。総合的な作業の集合が完成品なので。
最近になって「ここはあの人かな?」って人もいますが、極少数。キャストだと簡単に結びついたり確認も容易ですが、作画や動画はそれも難しい。撮影や美術なども同様。アニメはいろんな人が携わっています。
となると、さんざ偉そうなことを言っていたくせに結局のところ、現在有名な人か有名になった人が上から選択肢と優先順位を埋めてしまうことにならないだろうか。それは「人気が獲得できれば暮らしが楽になる望みが出来た」という意味でもあり、決して悪いことではないけれど。
あるいは、女の子の芝居やお色気描写ばかりでカットの奪い合いが始まらないだろうか。
エフェクトやロングショットで撮る日常芝居にも同じレベルで注目が集まるだろうか。服の皺やスカートのなびき、レイアウトの強度が肌の露出度や胸部の揺れの魅力に敵うだろうか。撮影の光やグレーディングが「神作画だ!」と評価されないだろうか。もうされてる。
そもそもそういう向きがアニメ業界の作品のチョイスそのものにあるように思える。硬派なアニメでは儲からないから美少女動物園が大量生産されているのだ、と言われても上手に反論できない。
裏方の花形
話が逸れたので戻すと、
正しく狙い通りに支援をできる人間がどれほどいるのか、さらなるアンバランスに自分が加担する恐れとどう向き合えばいいのか、答えが出ない。そんなもの、存在しないのかもしれない。
全部の要素が追えない以上、前に出てこない人はこちらも見つけられない。ポートフォリオ見してください、なんて言えないし。フォローにも限界はあるんだと痛感します。
「誰の仕事かもわからずに援助とか支援とか、ぬかしおる」と言われればその通りなんだけど、わかる眼が育つまで待ってたら当人が辞めてるかもしれない。
昨今、自分のパートを公開するアニメーターも少なくないですが、作監に修正された原画マンが「ここやりました!」なんてこともあるらしいですし。難しいです。
ああいった場で自分の好きな絵を描く人に出会えるといいですね。
アニメーターを支援したいけど、やっぱり平等は無理なのだ
そんなわけで、原画マン動画マンの窮困っぷりが先行していて他のセクションの状況まで目がいっていない私です。自分の生活も優先したいし、誰しもサポートに限界はあります。
ベストな選択ではないにしろ、ちょっと動いてみたくなったのでこんなことを書きました。完全に気まぐれです。焚き付けるだけ焚き付けて逃走するかもしれません。
私はあまりできた人間ではないので、顕示欲にも勝てず「伊達直人」みたいに上品に黙ってられんのですが、とりあえず手始めにウィッシュリストを公開しているアニメーターに何か贈ってみます。
「そいつは十分食えてるから慈悲をかけなくても良い」とか色々ありそうですが、自分の感動は間違いじゃないとブレず、気の向いたときに気の向いた額でサポートすればいいんじゃないでしょうか。
もらったものが余ったなら、その人がまた、近くの”助けるべき人”に供給すればいいんじゃないでしょうか。『ペイ・フォワード』の世界です。会ったこともない人の人格とか信用のしようがないですけど。横のつながり縦のつながりも全然知らないですけど。
で、視聴者も応援支援がしたいって言うんなら、できることから始めたらいいんじゃないでしょうか。やるやらないはおのおのの自由意志で、とりあえず知る努力は大事じゃないかと思う2018年の年明け。
そんな感じで〈アニメーターに直接お返しをする時代が来る……〉でした。
おしまい。
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