今期のアニメラインナップも次のラインナップにバトンを繋いで去っていきます。
待って! まだ行かないで! と思っていても去るものは去る。
出会いがあれば別れがある、なんて卒業式めいた常套句はさておいて、
EDで分岐演出/境界線演出が入っていたので、散り散りになるか誰かの別れがあるとは予想していましたが、こんな着地を迎えるとは……。
例えば、「運命的な出会い」だと勘違いした男女がくだらない原因で残念なお別れをするようなこともたくさんあるように、良い出会いが必ずしも良い別れに繋がるわけじゃないけれど、
そこに「良い別れ」があったのなら、それは間違いなく良い「出会い」だったんだろうな、と私は思います。座布団一枚。
そんなわけで、サクラクエスト最終回。
木春由乃が救った織部凛々子の未来
以下、おばあちゃんと混同するので、凛々子呼び。(しないだろ
凛々子が中盤くらいからキャラ変した、後半では一人完結のボケまでするようになってきた、そう思った人は少なくないでしょう。私も同意見です。実際に凛々子は大きく変わりました。
冗談を口走るまでの心のハードル
いきなり自分の話に置き換えるのもなんかやなんですが、私もああいった気質の人間でして、つまり、気の置けないメンツ内じゃないとツッコミもボケもできない。笑いを生むほうに体が動かないんです。体よりも口が、ですかね。打ち上げが全然「打ち上げ」じゃないタイプ。
加えて「気の置けないメンツ」の認定ハードルが高い。当然の結果として、友人少ないです。ははは。
なんというか、怖いんですよ。
スベるのが、というよりは異常な状態の私を認識されるのが怖い。スベるのも怖いけど。
「この人、冗談とか言うんだ」
って奇異な目で認識されるのが怖い。いや、その目を見ることそのものが怖い。
とまあ、半分こじらせ気味の私はこのへんで。
当然凛々子に感情移入せざるを得ないわけで、由乃やしおりさんと行動を共にしての その変化が嬉しくも羨ましくもあり凛々子の行く末を見守っていました。
自発的に冗談や小気味いいツッコミを言えるようになり、その範囲を五人から舞台の仲間まで広めていったのは、由乃が間野山にきて がむしゃらにも一歩動いたことを発端としているわけで、そう考えると由乃の来訪にはとても大きな意味があったと思う。
きっかけは由乃、真希やルシア、そこからは凛々子自身の心。
どっちに向かった変化を「成長」と呼ぶのかはまたムズカシイ話だけど、凛々子の変化と決断に何か大きなものをもらった気がする。「アスタ・ルエゴ」で涙腺ダバーの私
おばあちゃん、広い世界を見るのだ。
なんとなく視えてきた、お仕事シリーズの裏テーマ
作中で一番かわいかった瞬間の由乃はこれ。異論は認める。
さて、
お仕事シリーズ、または、働く女の子シリーズ(※)──尾道三部作みたいな扱いもすっかり定着していますが、なんとなーく、ふと思いついたことがあります。
(※P.A. WORKS制作『花咲くいろは』『SHIROBAKO』、そして本作『サクラクエスト』を指す。なんとなく指す)
もしかしたら「働く」描写の多いアニメ作品全般に言えてしまうことなのかもしれませんが、思いついたきっかけが本作なので本作の影響強しってことでひとつ。
(過去作含め)本作の裏テーマは、
「『私の代わりはいくらでもいる』に抗おうとしたかった」
──じゃないかと、いまになってそんなことを考えています。
私の代わりは誰だっていい
「私が居ないとこの現場は回らない」という、職場/組織におけるファンタジーはいろんな場所に根付いていて、しかもそんなグランド・イリュージョンにどっぷり魅せられている人もまだまだ大勢いて、しかし実際はそんなこと全体の5%ぐらいが関の山です。
仮にいま現在、亡くなってしまったことで日本国が消滅に追い込まれるような人物が日本内にいると思いますか?
契約一個取り逃して会社が崩壊しますか?
どうでしょうね。
大抵はどうにかなる。どうとでもなる。
組織というものは案外しぶとい。
喜ぶべきことに、私たちはスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグじゃない。
いやいや、ジョブズやザッカーバーグだって もしかしたらこっち側かもしれない。
旅館の給仕なんてたくさんいる、制作進行だって右から左、一国の長だって……これはまあ多くはないが、街の観光協会の人間のひとりと言い換えると、その矮小さにちょっと寂しくなるような。職業差別? ノンノン。
○○「どうして照明さんになろうとおもったんだろう?」
これは置いといて、
誰にでもできる仕事じゃないと言いつつ、また言われつつも、
やはり私以外の誰かにでもできる仕事である現実を知り、そこでどうするか/どう考えるかってことになっていくんだと思う。それでも続ける理由を探したり見繕ったり。
やりがいだとか居心地の良さだとか。そういうものを見つけていく。
私が「私」に満足できる場所を。「私」が必要だと思える場所を。
私の代わりは誰だっていい──わけじゃない
「私の代わりはいくらでもいる」
そんなド正論に冷水ぶっかけるようなアティテュードこそが、このアニメの裏テーマだったんじゃないか。
自分の立ち位置は自分で決められるんだぞ、みたいな。唐突な付け足し!
私にはちゃんと名前があって私の居場所がちゃんとあるんだぞ、みたいな。
あくまで裏テーマですからね。悪魔の証明よろしく勝手なこと言いたい放題モードです。
自分のことをうっかり好きになってしまいそうな、そんな危ういアニメでした。唐突なまとめ
未来はこれから!
そんな感じで〈『サクラクエスト』最終回。お仕事シリーズの裏テーマ〉でした。
Hasta luego.
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