OPの秀逸さについて書いたこのあいだの記事のなかで、「時系列を組み替えたcase○ってことは(中略)本作は分割の2クールなんでしょうね」なんて言ってましたが、どうにもそうではない空気がちらほら……。ナマ言ってすんませんでした。追記修正はしときました。
実際は既定路線なのに、最終回放送後に「二期、決定しました!わー」みたいな澄ました顔でしれっとお知らせするアニメ作品も少なくないなか、なんだか久々に「二期を匂わすエンド」で幕を閉じる最終回を観た気がする。ほんとに二期内定してないんだな。
こういう場合は「なに高望みしとんねん!? 一期もちゃんと通せてないくせに」と思わせる作品に巡り合うこと しばしばですが、本作は12話で終わらせるには非常に惜しい。ほんとに惜しい題材。
スパイはキッズの永遠の憧れであり、19世紀のロンドンという時代/舞台設定はロマンの宝庫である。メシマズだけは勘弁してほしいが。
で、個人的にワンクールで畳んじゃってMOTTAINAIと思っている要素は、
黒星紅白のデザインしたキャラクターが動くのがもっと観たかったもんだなあと。
黒星紅白のキャラクターパワー
黒星紅白のキャラクターって、言い表し難いラグジュアリー感がありますよね。
「らぐじゅありー感」のほうがそれっぽいニュアンスが出るかな。どっちでもいいよ。
ホットパンツガールや胸の大きめな女性が出てきても、下品さは感じない。フェティッシュの領域に含まれて差し支えない部位なのに、性的な目で見るのがなんだか申し訳なくなってくるような。でも、えっちぃのは嫌いじゃないです。
秋谷 有紀恵さん(本作のキャラクターデザイン)のチューニングも大きいのか、ドロシーのスタイルの良さがグーンと出た第二話や第四話とか高級品の域に達してるんですけど、えっちい=下品とはやっぱり違う。玄田哲章の守衛もそうでしたけど、興奮よりは照れが先行してしまうような。
あの神々しさは、叶姉妹のソレに近いと。(違う
賞味期限のポテンシャルはもっともっと長いのに、とか言うと失礼千万ですが、贅沢に使うにはワンクールはあまりにも短かった。そう思います。
光表現についてのインタビュー
時期的には最終回放送後、
電撃onlineのツイート「監督:橘正紀に質問しよう」のページから過去のインタビュー記事を見つけて、それを読んでいると、
「画面の明るみ/光の量で、息抜きと山場の緩急をつけるようにした」
──という監督の言葉を発見。
私の眼もなかなか捨てたもんじゃないな、と勝手にガッツポーズしてました。
ただこのインタビュー記事が第二話放送のあたりのもので、私が書いたのは第九話あたり、ついこの間で。それ読んだんじゃねえのかって言われると何も言えないのが、なんとも。手を動かすのが遅いとこうなるって典型的なパターンですな。
そのほかにも、公式ツイッターや公式ラジオなんかで小ネタの補完情報が出てたりするので、全部追えきれない私は肝心の監督への質問に困っている。
「それにはもう○○で答えましたよ?」
なんて言われたら、もう恥ずかしくてweb上でもコンタクトとれない。
そんなことにビクビクンしながら、質問考えてます。
募集期間は10/2 23:59まで。
>『プリンセス・プリンシパル』橘正紀監督に聞いてみたいことは?
>ファンからの質問を募集中 http://dengekionline.com/elem/000/001/596/1596688/ …
電撃オンライン-記事内
とりあえずひとつは送っておきました。
諸々の雑記
第一話冒頭、アンジェがCボール持って霧のなかに沈んでいく──いわゆる素子ダイブがありました。体ひねったりしてないけど、屋上から飛べばそれはもはや素子ダイブなのだ。
第一話で絵コンテも担当した橘監督は『攻殻機動隊 S.A.C』シリーズでも演出やコンテを手掛けていたので(これはインタビュー記事で改めて知った情報)、なるほどそういう繋がりもあるのかなと合点がいきました。勝手に。俯瞰した街の感じとか、もろそれでしょ?
あとはカーチェイスシーンの、
- 一台目(ドロシー号)をフォローパン
- トンネル(?)に入ってカメラがFIX
- FIXカメラに二台目(追手号)が横からフレームイン
この流れがいま風のジャパニメーションっぽくなかった気がする。ちょい古めかしい感じ。『トムとジェリー』あたりのカートゥーン系でよく観た動き。3コマで動いてたせいもあるけど、なにか指標があったかもしれない。それこそルパンとかもあり得る。
ちせの姉上、壁の向こう説をとなえる
第九話ですか、ちせ視点でちょっとおさらいメンバー紹介の回。あそこでちせのお姉ちゃんの存在が明らかに……というかお姉ちゃんいるんだってなりまして。日本にいるんだと思わせておいて、実はちせ姉もスパイ嗜んでおりますのパターンを密かに思い描いております。真田家みたいなもんですよ。子孫を残すために両陣営に姉妹で遣いを出す的な。お姉ちゃんがいるってていで情報を流しているって線も捨てきれませんが。まあ妄想の部類ですね。
親子でも嘘をつく、は回収している部分なので、二期があればお姉ちゃん掘り下げてほしい。でもあんな内容の手紙どこに出すんだよ。
あと第11話で堀川公が喋ったあとに「と、申しますと?」ってちせが返すんだけど、堀川公のが立場は上で発言主も堀川公だから、「と、仰りますと?」が正しいのでは? 申しますは謙譲語だろ!
第五話のディレクション
江畑諒真 作監の回。江畑ステップは観ていて気持ちがいい。
潜入兵士が任務中なのに浮かれているようにしか視えないのがまた面白い。
今回の見所の殺陣。
音響効果がいつもながら抜かりなくお仕事してて繰り返し観ても飽きない。
ちせと十兵衛の殺陣、アンジェとの襲撃あたりはすこぶるかっこいい。
それは間違いがないとして、スクリーン・ディレクション(またはダイレクション)がごっちゃになって要所要所で混乱する。いまどこにいてどこに向かいたいのかが、わからなくなるのはあんまり良くないな。
スクリーン・ディレクション
スクリーンディレクションってのは人物や状況を一定の向きで示す映像論で、
たとえば、それぞれの兵士の位置が入り乱れ入れ替わる銃撃戦なんかでは、敵と味方、優勢劣勢などの説明のために
「アメ軍は画面に向かって右から左にしか撃たない、ドイツ軍は左から右にしか撃たない」
という一種の取り決めが(その作品内ルールとして)あったりする。外洋に出た船のガワをおさめるときは常に右向きで撮る、とか。
銃撃戦のような、
みんな似たような軍服を着ていたり、汚れていたりして、もはや誰が誰だかわからない場合、整理の手助けにもなる。
これができていないと、ほんとに誰が味方でどこに向かって撃ってるのかさっぱりになる。
『スターリングラード』みたいな1vs1 スナイプ対決のケースだと、まだある程度許されますが、多人数&アップが多い、みたいな状態だとディレクションを守らないと画面は破錠してくる。
このへんの参考動画は『プライベート・ライアン』が良いかと。
話は戻って、
列車がロンドンに向かい一本道に進んでいくのに、カメラが車両内/外問わず、けっこうな頻度で切りかえすもんだから、ますます混乱を誘う。
この地図が出てきたのは途中の停車駅ですが、これが道中の基軸になるとして、ここからのディレクションとちせが乗り込んできたときのディレクションが逆行してるんですよ。これがもう私のなかでは”違う”。
車両のなかは左右似た構造/似た景色になるので、どちらが進行方向なのかは結構気を遣わないといけない部分。車両内を歩いていても「先頭に向かっているのか、後方に向かっているのか」がわかるように。
ちせとアンジェがCボール使って前を走る車両に追いつくシーンとか、なかなか飲み込めなかった。ちょい振り返り。
掃除夫が箒を地図にかけて「この地点で爆発させろ」と指示が出ていたわけですよね。で、潜入兵士はあえなく自爆になりましたが分断には成功。切り離されたアンジェとちせは、前の車両が右に曲がって折り返してきたところを、タンク経由の最短距離を”アルマゲドンジャンプ”で追いつく。そして例の直線並行シークエンスに入っていく、と。
流れはわかっていても、やはり……観づらい。あまり整理された画面とは言いがたい。
一枚全体の引きのカットがあればまた変わってきたんでしょうけど。
江畑氏の作画
江畑氏の身体の重心のありかを突き詰めるリアル志向かつダイナミクスのある作画を改めていくつか観ていると、
ダイナミックな原画とともにある背景は、一色または二色塗り(『Dimension.W』のED)であったり、お花畑のように360°が似た景色になるような(『アブソリュート・デュオ』のOPや『天体のメソッド』EDの銀河背景)、言ってみればディレクションの強制力が薄い状態であることが多いように思える。
(こう言うと平面のスパルタンXみたいなアクションしか描けない人と勘違いされてはいけないので、『キャラクターとアングルだけでグルングルンとカメラを移動させられる画を描く人』である、ということは忘れず付け加えておきたい)
そうすると「『まほいい』は背景があったぞ」なんて意見が出そうですが、背景の有無じゃなくて、テーブル移動するタイプの背景と舞台が今回のキモなんです。
列車は常に前方に、ロンドンに向かって走ってるわけですから、そこは右でも左でも(左のほうがいいな)統一したほうが画面は飛躍的に見やすくなる。
そんな五話の感想でした。
バックボーンの重さのチューニング
ベアトの喉の話って、けっこうえげつないと思うんですよ。その後、いろいろな場面で活躍するので肯定的に捉えられるようにはなっているんですが、仮面ライダーほどスッと受け入れられやすくもなく。
そこでスゲー上手い、「丁寧な仕事してるなー」と太ももを叩いたのが、
逃亡中にピーピー喚くベアトの喉のマシンをアンジェがオフにしたらしばらくベアトが喋れなくなるってあそこ。
あのイジりはけっこうドイヒーな部類のやり方で、(思わず笑っちゃいましたけど)ともすればアンジェにヘイトが生まれそうなところではあるんですが、それまでピーピーだったベアトが煩かったのは確かなので「よくぞやってくれた」感が相まってさらっと観客に受け入れられた部分。
あれで「ここまではいじってもOK」のラインが打ち出されるわけです。それも外部ではなく身内から提示されたことで信頼感/正当性も担保されている。実に上手い。あれひとつでベアトのなかでは喉の改造はすでに大部分が片付いた問題なんだなと理解できる。
雑記の雑記の
あとは第二話の、ベアトを双眼鏡で覗いているアンジェの口がパクパク動いていたのはなんだったのか、とか、「Lと7はひっくり返し文字の関係だけどそのへんどうなの?」とか、気になる部分はまだまだありました。謎のままの部分。
最終回で思ったんですが、Lってピアーズ・ブロスナンの面影ありますよね。五代目ボンドの役者のお方。
スパイの武器はロマン
そんなこんなでまとまらない、まさに雑記でした。
スパイもので最近面白かった『キングスマン』を唐突におすすめする。
全然隠密じゃないけど、スパイ養成/訓練時代の描写とかドラマがあってなかなかに楽しい。教会ハチャメチャファイトとか見どころも多い傑作。続編も準備中らしいので、未視聴の人はこの機会に観るべし。
おしまい。
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