ロンドンが舞台なので、イギリス繋がりでEDがビートルズ風味です。そこがまたいい。ラバー・ソウルとかマジカル・ミステリー・ツアーとか借りに行きたくなる。
現時点で追いついたのが四話までなのですが、面白いですね『プリンセス・プリンシパル』。ちょっと気になっている今村彩夏とちょっと期待してる影山灯が出ているので、私得なアニメ。
あまり意識したことなかったけど、スチームパンクの美術が見せる色合いが好きなのかもしれない。
case◯○の表記が13超えしているのを見かけるに、分割での2クールなのでしょう。
フツーに終わってしまいましたん。
2期か劇場版にでも期待してください、売り上げ次第です、と言わんばかりにあっけなく終りを迎えてやや拍子抜けな感。あれとかあれとか、掘り下げる前フリっぽいのがあったのはなんだったのか。
【追記終わり】
OP映像がすこぶるカッコいい
studio3Hz✕アクタス。
主に期待してしまうのは『Dimension.W』『天体のメソッド』『フリップフラッパーズ』を手掛けた3Hz制作だってこと。どの作品もキレのあるOPやEDで楽しませてくれる。フリフラOP、ヤヤカの後ろのフェンスで炎が燃え盛ってるカット最高や。
他方、アクタスは『ガールズ&パンツァー』『ろんぐらいだぁす!』『レガリア–』……とスケジュール管理方面で憂き目を見ているから、なんとなく印象は良くない。ははは。
しかし、出来上がったOP……すこぶるかっけえ。
サビ入り前の、ベースがグリス二発突っ込むのとか、すぐ真似しましたよ。ブ-ンブ–ン。
ね? かっこいいでしょう(なぜ自慢げ
クレジットがローマ字表記だと初見で追うのは厳しいものがある。世界観からして漢字がポンと出て来るのはよくないですから、しょうがない部分ではあります。
冒頭のスティックカウントに前照灯が音ハメしているのからして、おしゃれ✕オシャレ。
タイトルロゴに歯車がデザインされていて、人材=歯車のメタファというものは『モダンタイムス』から現代までずっと使われてきた表現で、つまり人間なんてのは誰とでも交換可能だ、「私がいないとこの店は回らない」なんてのはおめでたい幻想ですよって話なんですけど、それでいて「どこかいかれると全体の機能が停止する」のがまた歯車の側面でもありますから、そのあたりの危うさが彼女たちのスパイというポジションによくマッチしているなあと思います。
スチームパンクゆえでもありましょうが。
よく見ると歯車は六枚(ひとつはラチェット)なので、のちのちの追加メンバーがいるのかもね、なんて予想してます。しかし車の座席的に厳しいか。
その後画面を横切る白い鳩は五羽で、ここは現時点のメンバーの数と合うなと。
1つのアクションに個別のリアクション
そして白眉なのが、サビのパートで車が宙に投げ出されるシーン。
飛び出すまでのアクションもさることながら、三人の顔アップを繋いでそれぞれの表情を抜く魅せ方、おいしい……。
誰がどう見たって危機的状況といえるダイブシーンにキャラクターを投入することで表情のサンプルを取り、彼女たちのキャラクター性を観客に伝えるはたらき。
こんな状況下でも(ややジャンキー風味に)笑ってしまうドロシー、無表情で冷静なちせ、ベソかいてるベアト。三者三様の表情。
アンジェが率先して飛び出すあたりも役割分担の関係性なんかがうかがえそう。ちせと離したほうがいい部分もあったりして……無愛想な部分が似てなくもないし。
ともかくワンアクションで、彼女たちのキャラクター性がきっぱり分かれているんだぞって紹介パートとしてはすごい優秀でうまい箇所でした。炎色反応みたいにくっきり出てましたもんね。
『それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』OPの落下するところとか、『アルマゲドン』の適性テスト面接シーンをふらっと思い出しました。
イン、アウト、イン
あとは私が最近お気に入りの「フレームの外で肝心のアクションをしてフレーム内に戻す」ショットが入っていたこと。これワタシ的にすごくポイント高い。
懐かしいところでは『名探偵コナン』の初期OPでもあったりする、由緒ある見せ方。
掴めるかどうか、は枠の外で。一種の焦らしですねこれは。
こういうのね、私好きなんです。復活演出っていうんですか?(言わない
『瀬戸の花嫁』のオマージュ?
イン・アウト・インの演出が好きなのですが、特にプリプリのOPと合致する映像をこないだ見つけまして。これはオマージュだったのではないかと。
『瀬戸の花嫁』(監督:岸 誠二)の第1話。そのアバン。
プリンセス・プリンシパルでのキャプチャはこんな感じ。
「救いに来た」というところが共通する部分ですが、助けに来た瀬戸燦が人魚だったことを考えると、アンジェが黒蜥蜴星から来たと言い張ることも単なるジョークではなくて、もしや本当に……? なんて暗示だったりしたのかもしれませんな。
光の役割
蛍光灯やネオンとは違う、ガス灯のあの暖かみが観客のリラックス効果を生んでいるんだと。時代設定ゆえの照明器具──ガス燈の明るすぎない「光」が功を奏している部分がもう一個あってですね。
というのも、日中と日没後の明/暗がくっきり分かれている点です。
これが彼女たちの心のmode表現描写とわかりやすく繋がっている。
要はスタンバイ中か否か、ということ。
スパイモード(彼女たちは常にスパイではあるけど)になり任務を実行する際は夜、まさに人の少ない時間帯。隠密行動が基本なので当然といえば当然ではあるけれど。
思えばキャッツ・アイが真っ昼間にお宝を盗りに、あるいはルパンが「午後三時ちょうどにお宝を頂戴する」なんて脅迫状を出していたはずはない。いくらなんでも早すぎる。やはり夜が侵入や逃走に適しているのは間違いない。
これはスパイもの/ケイパーもの(※)の「お約束」であると同時に、「正体を知られてはいけない者は夜に動くべし」という、しっかりと理にかなった攻め方でもある。
(※ケイパーもの:『オーシャンズ11』『グランド・イリュージョン』『インセプション』『ミニミニ大作戦』のような犯罪チームものの作品群につくジャンル。マフィアのように悪い集団がドンパチするようなものや、悪い組織のエージェントひとりに物語を絞ったものなどとは区別されている。「協力」「チーム」「犯罪」がキモ。あと「未然に防げないトラブル」)
夜が彼女たちの労働時間さ
これがスチームパンク世界ではなく、2017年東京だった場合、こうはいかない。
東京は夜も明るい。人工的な明るさは、消したところで人工的な闇に変わるだけである。
そういったわけで、ネイチャー的な太陽による昼の明るさと、ネイチャー的な夜のほどよい暗さが彼女たちの出番前・出番中を表し、加えて明度の差による画面の引き締め/しぼりも相まって、観客も各々の集中どころを画面に、そして話の山場に持ってこられるようにガイドされている。とそういうわけである。
仮に4話以降に日中ミッションがあるとすれば、対象が日中人(日中に行動する人物)か、お手軽ミッションのどっちかでしょう。テキトーだな、おい
タイトルについて
プリンセス・プリンシパル。
「プリンシパル」というのは、バレエの位というか特に上手い上位に与えられる称号みたいなもので、お嬢様学校が舞台の半分でもあるので『バレエの上手なプリンセス(お姫様)』くらいに訳すもんだと思っていたら、プリンシパルには依頼人という意味もあるらしく、『依頼人 プリンセス』が正しい訳しどころなんでしょう。『交渉人 真下正義』みたいですね。
依頼内容もといプリンセスの野望も明らかにされたところで、ラストに向けてどう物語が転がっていくのかは気になるところ。
時系列が組み変わっているのもいい。第1話が物語上のNO.1話ではなくて、後半であることを示したぶん、「あそこにどういう経緯でいくのか」という謎が生まれる。1話で「この作品は面白い」と思わせないとできない諸刃の剣ではあるけれども、初手を成功させたことにより2話以降は第1話との差異(あるいはどこかで提示されたさらに先のcase○○との差異)に気づき想像力が刺激される。
「ちせはどこにいったのか? あとから合流するのか? ベアトはやや敵対関係だけど仲間になるのか? あ、二重スパイなのか? これはアンジェに向けられたテスト演習なんじゃないか?」
──もはや大河内一楼の手の平のうえにいるようである。
『メメント』『パルプ・フィクション』『アレックス』など使い古された手法ではあるが、やっぱり時系列再構築モデルは使い勝手がいいのだろう。ついつい惹かれてしまう。
そんな感じで〈『プリンセス・プリンシパル』OPの秀逸なリトマス紙的な演出〉でした。
おしまい。
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