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『リズと青い鳥』鑑賞。ふたりの距離を埋めてくれないカメラ

アニメ

観てきました、『リズと青い鳥』。面白かったです、凄く。

全体を通してヒジョーに静かな作品で、壮大なBGMによる大仰な仕掛けもなければ、アジテーション芸もない。

派手さや華々しさとは遠いところにいるけれど、そのぶん超新星みたいな静かで強いまぶしさが画面に溢れている。青春の光なのか少女の光なのか、もしくはその両方なのか、今はまだわかんないけど。光源そのものがフレームインしないのも観てて気持ちいい。

 

みぞれがひたすら可愛かったです。みぞれがひたすら可愛かった……。

ここまで眼球をナメたくなるヒロインもなかなかいないんじゃないかってくらい、眼球の描き方に惹かれてしまいまして。あの眼球の(←瞳でいいだろ)瑞々しさはなんだろうって考えたとき、まず思い及ぶのが、上下にまかれたハイライト。それから、”やりすぎ”のライン(アニメ的、とされるライン)をギリギリで踏みとどまるうるうる揺らぎ、ですよね。

『リズと青い鳥』予告編より
『リズと青い鳥』予告編より

 

(ハイライトの描き方/動かし方含む)近年の眼球まわりの描き込みは目を見張るものがあります。いろんなアニメで凝った見せ方を試みたりしていて、まさに群雄割拠な眼球世界。

もうひとつ美味しさの秘訣っぽいのが、眼球のトップが膨れ気味になっていること。親切に横から顔を映すショットがたくさんありました。

『リズと青い鳥』予告編より
『リズと青い鳥』予告編より

 

ばっちりの素材がトレーラー内にはなかったけど、まあいいや。ちょっと丸ーく前に出てるなあ、と私は感じるんですがどうですか。この画角からでも左眼球みえちゃうんだ。

なんとなく、コップいっぱいに表面張力のはたらいた瞬間を想起しませんか?(あからさまな誘導

『リズと青い鳥』予告編
『リズと青い鳥』ミュージックPVより

 

ほら、この球体っぷり! その上をすべる水の膜。

思わず口で掬いにいってしまいたくなる衝動にかられる。

眼球prprアニメ爆誕。

目の話おしまい。

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言葉にしない美学とジレンマ

鑑賞後、文字として感想を残そうと模索した結果、こんなことを書きました。

映画としての「言葉にしない」美学と、対人関係における「言葉にしない」ジレンマの間を絶妙なバランスで行き来していた作品 だと思います──。

 

お、おう……。しかし、二周回って、いいこと言ってる気がしてきたぞ。

美学とか、ジレンマとか、つまりどういうことか。

 

映画的な間合い

アニメを観ていると、「少しは画で語れ」と思うことがある。

「映画」としての出自は登場人物が台詞を口にしない「サイレント映画(無声映画)」から始まっているのだから、状況や事象の説明を台詞でべらべら喋らせるような真似をするのは恥ずべき脚本家のすることだ。ちょっとばかし言葉に甘えすぎてるんじゃないか?

映画には言葉にするよりも伝わる魅せ方がある。と私は信じている。

本作は、会話のなかに──言葉と言葉のやりとりのなかに──深い「間」がある。

会話は度々キャッチボールに例えられるけれど、本作におけるそれはお互いの距離が離れているわけではない。そういう種類の「間」ではなく、キャッチしてから、グラブのなかでボールを握り直す時間、そのインターバルだ。

そこに画で語る魅力と巧みさがある。

気持ちの間合い

一方、希美とみぞれの両者間にあるのは、「言葉にしなくても伝わる。言葉にする必要はない」という油断や妥協、それらから転じた決断への逃避/認識の違い。

私達は(これからも)大丈夫──。

そんな先延ばし(いや、考えもしなかったのだろう)にしてきたあれこれが、無数に残っていると思っていた砂時計の珪砂のように、今まさに下に落ちる瞬間を迎えたのである。扉が開かれる瞬間がやってくるのである。

卒業。そして、進路の選択。

希美と一緒にいるためだけに鳴っているみぞれの”音楽”は、コンクールの自由曲であり同名の童話でもある『リズと青い鳥』や、学校、己の支配欲などいくつかの”トリカゴ”を通して少しだけ変化する。ナゾにあらすじめいたものを書いてしまった。

『リズと青い鳥』予告編
ここスーパーにかわいい(『リズと青い鳥』予告編より)

かわいいは重要!

絶妙な危うさ

みぞれと希美の二人に対して「お互いへの気持ちをもっと言葉にしてよ!」と思いながら、映画体験者として、この上ない言葉数の少なさに酔いしれてもいました。そういうふたつの相容れない感情が──互いに素(disjoint)が──もどかしくせめぎ合う、そんな90分でした。

それだけに、「よろi……剣崎(ry」ってテキストが理解できなくて、いまだに腑に落ちない。なんかあそこだけやけに嘘っぽくて、バタ臭いノリとして頭に残ってんですよ。

 

以下、未鑑賞の方の、鑑賞時の楽しみと驚きを損なわせるであろう文章が多少出ます。ありていにいえばネタがバレます。

しかしこの映画の「ネタ」はどこにあるのか、と自問してもあまり答えは出ない。そういう映画じゃない気もする。結局はその人それぞれの「心のネタバレ」があるので、なんとも言えないが、いまここで情報を入れてしまうことで自分が発見するはずだった”気づき”への嬉しさが半減する可能性については一応断わっておきたい。めんどくさいやつだな~。

気合の入ったオープニング

部室のふたりをバックに本作のタイトルである『リズと青い鳥』という文字がゆらーっと浮かんでくるまでの数分でもうせめぎ合いが始まっている。ガルパンの劇場版みたいに、あそこまで無料で公開とか出来ないのだろうか? 「京アニの絵柄で観たかった……」とか言ってる人も黙らせられるんじゃないかないかと思うんですが。

そんな風格が漂うオープニング。正確には童話パートを挟んでのオープニングと言うべきか。

音良し画良し空気良し

みぞれが校舎前の階段で佇む。みぞれは喋らないし、通学してくる他の生徒も喋らない。

そこに、食器かなにかをカチャカチャ合わせたような
【追記】おもいっくそピアノとか鳴ってましたね。ミュート気味だったような。【追記終】

NINやトクマルシューゴを思わせる無機質なBGMが流れはじめ、作品全体のシリアスさを予感させる。

なんて思っていると希美が登校&フレームイン。
すると次に流れるのは軽快なテンポのBGMである。

ははあ、無機質な音楽は作品全体にかかっていたのではなく、みぞれにかかっていたのだな。つまりこれは二人の反するキャラクター像を、色味の違う音で表情づけしていたんだな。なるほどなるほど。るーるーるー。

対照的な二人・対照的な音がLとRから見事な融合を果たし、無二のハーモニーが生まれる

音良し

本作の音楽は牛尾憲輔さんが担当している。

LAMAでお名前知りましたけど、アニメ的には『ピンポン THE ANIMATION』の音楽で大活躍された方、という認識が一番わかりやすいのかな? 『聲の形』でも音楽担当されてました。

歩きかた(足の着地)に合わせた音使いにも二人のキャラクターの違いが出ていたりと、二人の関係性を物語る重要な役割を担い、心情が浮かび上がる場面では何度も音楽の力が効いてくる。ほんとに素晴らしい仕事である。

灰と幻想のグリムガル』では全然気付けなかったフィルムスコアリング感が随所に感じられるので、未見の方、もっかい観る方、目と同じくらい耳も集中させて鑑賞してほしいです。

特に好きなのは、冒頭の”無機質とのハーモニー”と、フルートの反射光がレーザーサイトみたいになってみぞれに届いたあのシーン。あそこの、みぞれがちょっと俯いたあとに前を向くと希美がすでに居なくなってる瞬間の音の変わり様ったらタマんないですね。世界はみぞれをどこまで追い詰めたら気が済むんですか、って憤りながら心のなかでウヒヒしてました。ウヒヒ。

童話『リズと青い鳥』のなかで流れるBGMは楽曲『リズと青い鳥』のアレンジだったり、剣崎リリカのテーマも、二度三度繰り返しているうちは息抜きゾーンとして機能させておいて、「オーディション落ちちゃいました(泣)」の瞬間に音の鳴らし方のパターン変えてきたり。アコギのボディを手のひらで打つ、みたいな。あんまりイメージ残ってないです。

あとはふたりが向き合ってからの不気味な低音への移動ね。あれはほんとに何だったんだろう。なんの予感/暗示ですか!?

 

じゃあ、音の話はこのへんにして。

画のテンポがいい(危険なワード)

もう少し冒頭の話。

二人して部室に向かうシーンは、端折るところをさくっと端折ることで簡素に整理されていて、アバンの数分だけでもう名作の匂いがプンプンである。障害物競走でも借り物競争でもなく、400M走。まっすぐ走るだけ。それくらいわかりやすい。逆にわかりにくいか。

実際にあったであろう、みぞれに声をかける希美の「よっ、おはよう みぞれ」とか、部室の鍵を借りに入った職員室での「失礼しまーす」とか、こういう演技。これらを全部すっとばしてる。台詞が……、言葉がガシガシ削られてるよ。


『リズと青い鳥』予告編より

 

上のgifは登校してきた希美がみぞれを見つけた、そのあとのカット。カメラは校舎側に移動して、階段を登る二人を迎えるようにフレームにおさめる。右下から二人が現れた瞬間にハッとさせられる、見事な繋ぎ方である。

……。

これ、めっちゃよくない? わたし好きでさー。

 

「ああ、帰ったら『花とアリス』を観よう……」と思いながら鑑賞してました。

『花とアリス』リズと青い鳥 『花とアリス』リズと青い鳥 『花とアリス』リズと青い鳥 『花とアリス』リズと青い鳥
少女が並んで歩いてる、くらいしか共通項もないんだけど(『花とアリス』より)


この時点でけっこうなメーターが上がっている様子の私。

音良し画よし空気良し。これは面白いものが見れそうじゃ。
そう思いました。

じゃあ、あとはポイントで好きになったところとか。画で語ってたポイントとか。

もう少し続く。

承認制コメント

  1. ふぁぶ より:

    興味深くて拝見させていただきました。
    鋭い考察に驚かされたり、納得したり、ここは少し私とは違う解釈だなと思ったり。
    しかし、最後の「与太話」は目から鱗といいますか、本当にそうだったらいいなとホッコリしました。

    • ふぁぶさん、こんにちは。
      がーっと思いついたことばかり書いて、読みやすいような上手な構成まで整理できていませんが、
      何かを感じ取っていただけたのなら嬉しい限りです。
      たとえば「誕生日」なんかの話題に触れる場面があったなら与太話も面白く活きてきそうですが、
      やはり与太の範疇を飛び出しませんね。