うおっ、まぶしッ(照り返しが
「境界線演出」とは、キャラクターとキャラクターの間に”ライン”を引くことで両者の関係の分断や対立を示唆/暗示させるものです。
もう少し細分化すると「対立、死別、裏切り、嘘」など受け取り方は様々で自由です。
両者を分かつ”ライン”もまた様々。物理的な棒状のものを置いたり、遊具で囲ってみたり、影がかかっていたりと、例には暇がありません。あくまでも見かけ上で成立させる演出技法であり、画面分割とは別の演出技法だと考えてほしい。
例えば『聲の形』では、西宮硝子と植野直花の関係にも対立の境界線演出がみられます。
植野のほうから、西宮硝子に対する壁を作っているのが伺えます。手前の木の右側には遊具があり、左側には遊具はない。遊具は子供(あるいは幼稚性)と結びつくアイテムなので、植野の粋がりも垣間見える構図でもあります。
もうひとついきましょう。
『レガリア The Three Sacred Stars』では、カタギの世界と裏社会の境目を、日照と影の境界線で表現していました。こういうのはよくある。凡。
『レガリア The Three Sacred Stars』第1話より
ラインに用いるものはほんとに何でもいいのです。木でも常夜灯でもストローでもテーブルなんでも。校舎の門扉だっていい。細くても太くてもいい。素材は何でもいいということは、裏を返せばセンスが試されるということでもある。
「あ、そんなもので境界をつくれるのか。そこからカメラで抜けばあれが境界線になるのか」
そんな驚きと発見。映像を観る意味はここにあると私は思います(照れ
『はるかなレシーブ』第1話,タクシー内の境界線
『はるかなレシーブ!』の比嘉かなたは内気な少女です。
対人関係の構築は不得意で、幼少からの付き合いがあっても、時間が空くと心の距離が空いてしまう。
距離を取る=壁を作る、つまりかなたのATフィールドがタクシー内で展開されているというシーン。パイ/スラに視線引っ張られてる場合じゃないですよ!
いい。
運転者運転手のガード用というか、なんて名称なのかイマイチ知りませんけど、この防弾ガラスのようなプレートと逆L字型になった枠が外部との境界線に。
消極的な性格、引っ込み思案な性格(と主に過去の経緯)から殻をつくっている、そんなかなたの心境が世界との境を生むわけです。
演出もさることながら、お話の構成に目を向けても見事なもので、かなたの気分をブルーにさせたはるかの「私とおんなじくらいの身長かと」なんて発言や、自分の身体が小さいことを自虐的に言った「大丈夫です、私の部屋、広いので」など、後々(第3話/第4話)になって明かされる、強いスパイクを打てる条件、かなたの葛藤への布石がすでに置かれていてシビれる。
ただのとっつきにくい性格の持ち主、ではなくて、それなりに背負ってるものがあると。観返して気づける部分かもしれないけれど、その……好きです(まとめろ
再度、枠のなかにかなたの顔。ここにしか置けないというカメラのポジション。
ちょっとやりすぎというか、あからさまさが無理をしている観もありますが、「境界線? 知らねえ」って具合に壁を溶かしてココロの領域に入ってくる はるかの性格の表現でもあるわけです。ちょっとずつ侵攻してます。
囲い境界で思い出した『宇宙よりも遠い場所』
思い出したようにちと脱線。
かなたのように殻をつくる、内側に留まる演出で思い出したのが『宇宙よりも遠い場所』第4話の公園での会話。
南極行きを決意したキマリと心配する様子のめぐっちゃん。
外へと出ていくキマリと、囲いの中に留まるめぐっちゃんの対比であり、二人の間には太い断絶がある。これもひとつのトリカゴであったのだ。
まあ、めぐっちゃんのこのあと、このずーっとあとのことを思い返すと、二度美味しいみたいなカットですよね、これは。
2人の行く末が気になる方は、本編をぜひとも観てください。
コートにまつまる境界線エトセトラ
ネットを挟んでの対峙は進行上たびたび出るので、それ以外の境界を探してみましょう。
エースという言葉に過剰に敵意むき出しの成美と、遥。どっちかっていうとはるか側のかな恵。1vs2
ガチ勢andエンジョイ勢と、ビーチバレーに対して素直になれないかなた。コートのサイドラインとポールで分断された位置関係。1vs3
境界線を超えて和解するふたり
試合後、握手をする遥と成美のふたり。
境界線をキャラクター(の部位)が超えることで、打ち消し演出にも転じる。二人の間のわだかまりは消えたというサインですね。
最後は、かなた家の縁側に並んだ履き物のカット。
左から、遥・かなた・おばあちゃん(比嘉ソラ)。
礼儀としては若者ふたりの脱ぎ方がふさわしくて、自分の家の意識が強いぶんおばあちゃんは室内向きの脱ぎ方になっているんだと思います。もしかしたらおばあちゃんには外国の血が流れているかもしれない(危険な表現)。
それはともかく、石段の繋ぎ目に注目。
遥のサンダルが少し離れていて、かなた・おばあちゃんペアで区切られています。
遥はフレンドリーな性格でありながらも、他所のお家にお邪魔している自覚もあったりして、かなた家に少しばかりの遠慮がまだ残っている。これはそういうカットなんじゃないかと思います。
第1話「エースなんて必要ないの」
脚本:待田堂子
絵コンテ:窪岡俊之 演出:池下博紀
そんな感じで〈『はるかなレシーブ』第1話とバチバチの境界線演出について〉というお那覇市でした。
おしまい。
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