みなさん『幼女戦記』観てますか? 面白いですよ(幼女の顔芸が)
先週、イマジナリーラインの話を書いてたときに「そういえば幼女戦記の第7話でも妙なカメラワークがあったなあ。あれは春藤佳奈のコンテ回だった」と頭には残しておいたんですが、記事に起こすまで随分時間がかかりました。
春藤氏は幼女戦記の第3話でもカット繋ぎのテンポが気持ちいい良いコンテを切っていて、そこで恥ずかしながら初めてお名前を認識。本作で副監督もやってるってのに。
お名前の読み方が分からなくて、「しゅんどうかな」なのか、もしかすると「はるふじかな」かもしれない、と疑問で公式に問い合わせてみたりしたのですが、どうやら「シュンドウ」読みが正しかったようです。URLに入れなくて良かった。
てなわけで第3話と第7話の春藤回のコンテとかカメラについて。
タイトルが出るまでの緊迫感のあるカメラ
カメラの動かし方がうまい。ぐぐーと上がっていくカメラが、「この会話は二階で行っているものです」とすぐにわかる。大事なのは視線の誘導なのです。
次にティーカップを手に語るデグレチャフ。
このカットでは、デグレチャフがセンターより左側に立って意図的に右側の空間を広げている。
このことによって観客の視線はスムーズに右側に流れていく準備をするようになります。デグレチャフの視線が右を向いているのも効果になっているのは言わずもがな。誘導したい方向に道を開けるのは(リバースショットの)基本です。
次のカット。
こちらは右を埋めることで左側に”逃げ”をつくっています。
ルーデルドルフとデグレチャフの会話がありますから、まあ向き合っていると思いますよね、当然。
このふたつのカットによる空間づくりで、デグレチャフの右側(視線の先)にルーデルドルフ、ルーデルドルフの左側(視線の先)にデグレチャフがいるんだろうと観客は思います。
つまり俯瞰で見ると、こうなってると思ってたんですよ↓(紫の☆がカメラ位置と向きとか移動線)
ところが、次のカットのアクションで頭のなかにあった二人の立ち位置がくるっとひっくり返されることになります↓
デグレチャフが90度体の向き変えると、ようやく2人は正面になる。
つまりさきほどの向き合っているようなカットは、そう視えていただけで実際はカメラが向きを変えていたんです。
キャラクター同士は目が合っていないのに、カメラは視軸(想定線)のうえにいたんですね。
そして俯瞰で種明かし&どアップ。
最初のカットとは視線の向きが逆転しています。両者譲らぬ立ち会い。
実に面白いカットでした。一連の流れが窓のカットから入ってるのもおいしいですよね。
鈴木清順『ツィゴイネルワイゼン』の青地豊二郎と青地周子のやりとりのシーンのオマージュかと思いました。ティーカップ持ってるし(『ツィゴイネル-』は湯呑みだったか?)。
イマジナリーラインをカメラが越えたりした場合、後ろの地図や窓などで部屋の配置や構造を把握できそうですが、案外、部分的に一面だけ見せられるとなかなか気が付かないものです。
余談や思いすごし:(さきの縦の動きでいうと)二階にいるという説明部分としての動きの他に、上官との階級のうえしたの表現みたいなものもカメラのアップダウンでそれとなく描写しているような気がしました。
このカットは後ろにかかった絵画を二人の位置関係のガイドにしている……など。
タイトルが出るまででもうすでに楽しいシーンでございました。
葉巻の煙CGについて
ワインと葉巻がよく出てくるアニメである。
ご存知でしょうが煙草・葉巻の煙には種類があって、「副流煙・主流煙・呼出煙」と三つに分類されます。特に有害なのは副流煙です。まあ喫煙者がそもsも(ry
で、アニメで描かれるのは、葉巻の先端から上に伸びる副流煙と、口から吐き出される呼出煙です。主流煙はそのまま喫煙者の肺に入っていきますので普段は描かれないでしょう。
幼女戦記では副流煙をCGで、呼出煙をCGと手描きの併用で描いてます。(おそらく。もしかしたら呼出煙は全部手描きかも)
先端から煙が出ていくので、先端が移動すると出どころも移動してかつ煙の線がブレるものですが、そのあたりも丁寧だなー。
紫煙くゆらし、いい。
予備動作として一回右手を引くときの軌道に合わせた煙がグッドb。
これは第7話の評価というより、シリーズ通してタバコの煙の処理が良かった。
補足:第7話での「絶景かな」などの台詞の使い方、反復してるんだけど意味合いがちょっと違う、みたいなの好きです。
『幼女戦記』第3話のリヴィールフレーム
こちらも春藤佳奈がコンテを担当した第3話から。
三人は同ポジ、背景だけ流しての節約歩行+リヴィールフレームでの場所転換。実写カメラ的にはフォローですが、アニメでの”フォロー”は背景だけが動くこと多し。
デグレチャフの衣装が軍服コート→半脱ぎ→制服(?)に切り替わっていく。
着替えている間もドクトルは延々ネチネチと説法を喋っていたと思うとなんともコミカル。ついてくる助手のおっちゃん含め、テンポいい。
第3話のマッチカット
「同ポジ」や「ジャンプカット」よりは「マッチカット」として扱うのでいいと思うんですけど、冒頭の実験の概要説明からテスト飛行までのぶっとびカット。
もうひとつ、同じ回の終わり際、扉でのマッチカット。
『幼女戦記』第7話より
扉のこちら側でゼートゥーアがドアを開けて入ろうとするところから、ドアを開けたデグレチャフをドアの向こうから迎えるカットに切り替える。いいね!
春藤佳奈の絵コンテの味
まだ幼女戦記で何本かと『放課後のプレアデス』の一本しか観てないんですが、映画的な演出を混ぜたコンテを書く人だなあと思いました。映画的な演出が自分でもよくわかってないんだけど。
映像の楽しさ、画としての楽しさを魅力にしている感じ。映画好きそう。
あとフレームでキャラクターを切るのが目立った気がしましたね。
面白いコンテきる人なので、今後チェックしていきたいです。
アニメ版『幼女戦記』の総括
幼女戦記は背景がすごいいい。泥臭さアーシーがぷんぷんするし、古い時代の戦争を描いたフィルムっぽい色素(彩度)の薄さね。銀残しとか、そういうのですか。『プライベート・ライアン』的な。濃い所では濃い色合いにもなるんだけど。
原作との差異がややあるそうですが、アニメ『幼女戦記』楽しく観てます。
おしまい。
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