『スクリプトダクターのサクゲキRADIO』第8回(#8)において、三宅先生のpodcast録音環境の話が出ていました(ステレオきんぎょさんからの質問への応え、というかたち)。
質問パートは42:00あたりからです。
私自身、過去に宅録の経験が少しだけあり、レコードエンジニアのマネごとのようなことをして、小さく流通したCDのお手伝いなんぞをしました。
なぜか私が用意することになったポップガード(撮る側なのに!?)。
そんな背景が功を奏し(?)、音声オンリーの先生の説明だけでもシステムを十分に理解できましたが、やはり少しでもビジュアルがあったほうがより理解が捗るかな、とも思い、みやーんZZさんみたいに上手な書き起こしはできませんが、機材と環境を書き残してみます。というか私の復習に付き合ってください。
三宅先生の自宅で発せられた声がどういった経路で私達の耳の中、脳のなかに入り込んでくるのか、『ロード・オブ・ウォー』のオープニングのごとく順を追っていきたいと思います。
podcastの公開までは3つの段階に分けられます
実際にマイクの前で話した声が、音声データになって、Spotify上に公開され、クリックひとつで再生されるまで大きくは3つの段階工程があります。
この流れです。
もう少し細かく見ていくと、podcastで話されていた内容にあたります。
つまり、作成の道筋は「喋り声 → ポップガード → マイク → オーディオ・インターフェース → PC → DAW → 波形編集ソフト → DAW → 配信ディストリビュータ(anchor)」となります。
そしてSpotifyで公開・配信されている、という流れです。
【録音】おしゃべりから録音まで
暮らしを見つめる。古い。
バーで隣に居合わせたおじさんがなにやらサクゲキについて(またはブルボンのお菓子について)喋りだす、というコンセプトで発信しているとおっしゃっていたので(ちょっとニュアンスが違うかも?)、「おしゃべり」と表現しています。他意はナシ。
まずはおしゃべりから録音まで。机椅子や室内の防音設計などは割愛します。
マイクとポップガード
録音をするとなると、まず「声」を出しますね。
PCにおしゃべりを録音するためにはマイクが必要です。そして、マイクだけだと吹きかけや破裂音ノイ、クリッピングを拾いがちなので、それらを防ぐためにポップガードを口とマイクの間に配置します。
マイクがShureの「MV7」で、ポップガードがステッドマンの金属製の製品。
ステッドマンのポップガードはAmazonにいくつかありました。
金属製だと、メンテナンスが楽、布と違い水洗いもできるし破損の心配も少ない、といったメリットがあります。
MV7というマイク
「MV7」はその価値こそ間違いがないのですが、ちょっと高めと言えば高め。
機器への接続方法は「USB接続」「ファンタム電源(XLR接続)」の2つに対応しています。
USB接続という選択肢があるので、オーディオ・インターフェースを通さずにPCに音を取り込むことができます。しかし、オーディオ・インターフェースを使うか使わないかは、音質を良質に保つ面で非常に重要なファクターでもあります。先生もオーディオ・インターフェースを使ってますね。
オーディオ・インターフェース(ミキサー)は「AG03」を使用
ヤマハAG03。これも定番というか、鉄板商品ですね。上位機種も人気です。
配信者の神器のひとつ。ローランドのVT-4とともに大人気商品です。ボイスチェンジャー機能が欲しい人がVT-4を選んだりしますね。たぶんVtuberに多い傾向。
ちなみに私が使っていたのはSteinbergのUR22です。ギターを撮ったりベースをライン撮りしたりしてました。
MV7はUSB接続もXLR接続もできると書きましたが、AG03を導入しているからには十中八九XLR接続(ファンタム電源)で繋いでると思います。音質が良いのは確実にこちらの方法です。
DAWソフトは「GarageBand」を使用
さて、ここまでがマイクの前で話している自分の声を「より綺麗な(そのままの)状態を保つ」ための機能であり、機材の役割でした。
オーディオ・インターフェースからPCに取り込まれた音声データは、DAWソフト(デジタル・オーディオ・ワークステーション)内に流れます。
DAWソフトの一例
- Pro Tools
- Cubase
- GarageBand
- Logic Pro
- STUDIO ONE
- FLSTUDIO
三宅先生が使用しているのは「GarageBand」ですね。
GarageBandはMacのパソコンには最初からインストールされています。無料で使えていいですね(Winユーザーの嫉妬)。
DAWソフトは上記のようにいくつか種類があり、フリーソフトでも多機能なものもあります。STUDIO ONEなんかがおすすめです。私はCubaseユーザーです。
オーディオ・インターフェースにバンドルされていることもあります
オーディオ・インターフェースの製品のなかにはDAWソフトがバンドルされているものもあります。バンドルというのは同梱のこと。PS4の本体を買ったら遊べるゲームが最初から入っている、みたいなイメージです。
さきほどのAG03もCubasis AI(Cubaseのコンパクト版)がバンドルされています。AG03だけ持っていれば簡易的にDAWソフトが同時に手に入り、先生が「GarageBand」で行っている作業と同様の編集ができる、ということです。
GarageBandで録音する
DAW(「GarageBand」)でおこなう作業は「録音」です。
赤い録音ボタンを押してひたすら喋るだけです。誰も反応してくれない壁やディスプレイを見ながら、喋り続けます。
50分ほど喋ったら、50分ほどの音声データが出来上がります。当たり前だ。
このなかからどれだけが「使えるデータ」になるのかは、自分次第です。
(中略)なにはともあれ、愉快な話が撮れました。
あとは先生も話していたとおり、多少の環境音やホワイトノイズが混じりこんだ声のトラックを加工していきます。
次からは編集の段階に入っていきます。
【編集】GarageBandと波形編集ソフトを使って音を整える
先生はホワイトノイズや環境音ノイズの低減は、音声編集ソフト「Audacity(オーダシティ)」でおこなっていると説明していました。
長い間人気のフリーソフトです。
のちのイコライジング(高域や中低域のカットによる調整)に関しても、GarageBand内部で完結できる領域ではありますが、ひとまずAudacityを使っているということなので準拠します。
ノイズを除去の手前まで低減できたら、再びGarageBandに音声データを戻します。
GarageBandで言い間違いや詰まりをカットする
言い直した部分のカットや間延びした部分のカット、話したものの不採用によるカットなど、「ハサミ」を入れるリファイン作業はGarageBandで行っていると思われます。私ならそうする。
波形の加工と尺の編集・パートの取捨選択の順序については明言されていなかったようですが、私であれば全尺の音を整えてから要らない部分にハサミを入れていく方法をとります。
そうこうしているうちに、話している音声データはほとんど出来上がりました。
BGMやガヤを加える
しかし、このままだとpodcastラジオとしては少し寂しいので、冒頭のバーのような空気感のあるガヤと、ジャズナンバーのBGMを用意します。すごくお上手な雰囲気作りですね。使用している音源は、著作権フリーの作品とのことです。
このBGMの音源は、おしゃべりのトラックとは別のトラックにのせます。
演奏の音量が大きければ話を邪魔しない程度にまで落とします。また、定位をずらす、リバーブを掛ける、時折音量を上げるまたは下げる(フェードイン)、というオートメーションな編集もGarageBandの内部で行います。
複数のトラックのバランスをとる
サクゲキRADIOはおそらく4トラックか5トラック程度のパラデータで出来上がっているかと思います。
声の音声トラック、BGMのトラック、SEのトラックが出揃い、音量のバランスも実際に流して確認します。問題がなければ、これで納品できる前段階まで完了しました。
編集作業の仕上げにファイナライズ(オーディオに書き出す作業)をして、音声ファイルを作成します。拡張子はmp3、m4a、wavどれでも納品先のanchorは対応しています。
次はAnchorに音声データを納品(公開)します。アップロードとも言います。
【外野からの補足】機材の選択肢は色々とある
三宅先生の環境と機材はベーシックでクラシカルなチョイスでもありますが、もしリスナーの方々のなかに「これだけ準備しないと始められないのかー……」と二の足を踏む方がいらしたらちょっともったいない気もするので、そこだけこの場で補足しておきます。
ステレオきんぎょさんが「iPhoneでも完結できるというのは調べましたが──(以下略)」とメール内でおっしゃっていたように、省ける機材もありますし、機材のグレードを下げるという選択で予算をコントロールするといった対応もとれます。
たとえば、マランツの「MPM-1000U」はUSB接続仕様なので、オーディオ・インターフェースなしでも録音に使えます。スタンドが付属していないためスタンドは別で購入する必要がありますが、値段の割に良いマイクです。
スタンドやマウントクッションも付いてる上位機種でも良かったかなと、3000円ほどをケチったあとで後悔しています。
──と予算を見越してどこかしらで省いていくことは可能ですが、それでもおれはエリック・クラプトンの弾いてる”あのギター”が欲しいんだよ、という気持ちもたいへん理解できます。尊重します。
楽しいことには予算は二の次、の気持ち。大事だと思います。
【納品】Anchorに音声をアップロードする
ここからは私も未体験ゾーンです。
anchorというサービスを利用します。アップロードするだけで、各podcast配信プラットフォームに自動で配信してくれるありがたいサービスです。tunecoreのようなディストリビューターと考えたらいいのでしょうか。
Anchor以外の機能を使ってオーディオを録音した場合、そのオーディオをAnchorアカウントにアップロードすることは可能ですか?
もちろんです。Anchor以外の機能を使ってオーディオを録音した場合でも、Anchorアカウントにオーディオをインポートできます。ファイルが250MBを超えていないこと、またサポートされている以下のいずれかのファイル形式で保存していることを確認してください。
- mp3
- m4a
- wav
- mpg
登録を済ませて、音声ファイルをアップロードすればあとは各プラットフォームに自動で配信してくれる、ということです。もちろんSpotifyにも。
anchor単体でも録音・編集は可能
公式で調べていたんですが、anchorでも120分までの録音は可能だそうです。
なのでiPhoneで録音から編集公開まで完結するならanchorでやってやれないこともないのだと思います。ただ、編集の機能(ユーザビリティ)があんまりよくないという声が多く、であるならば、別のDAWソフト──たとえばGarageBand──で作成したファイルをanchorにアップロードする方法をとったほうが、早く出来上がりしかも良質なpodcastが作れるんじゃないかと思います。
このあたりは手を出してみないとなんともですね。
おしまい:どんどん身近になりつつpodcast
podcastというものがすごい浸透してきたというか、身近になってきましたね。誰かが、そして誰もが何かを発信するのが全然珍しくなくなってきた昨今、小規模なコミュニティーが色々と生まれているなあという感触があります。
やりたいからやる、いう単純ながら強い動機は今も昔も変わらないのかもしれません。
そんな感じで〈「サクゲキRADIO」のpodcast録音環境の覚え書き〉でした。
おしまい。
関連リンク
スクリプトドクターのサクゲキRADIO│Spotify
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