義務感で映画を観るのはよくない。
なんとなく純粋に観れないというか、気持ちがどっぷり浸かっていないうちに観始めちゃって、序盤からうまく消化できないままどんどん物語が進んでいっちゃったりして。あげく精神がいい状態じゃないから良いシーンや驚きの結末がきても「ふーん」で終わってしまったり。「あの映画を観た」ことに執着するあまり脅迫観念に首を絞められていく感覚があります。
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でも……ちょっと考えてみてください、アニメでも小説でも音楽でも義務感で作品を漁ってませんか?
結局のところ「何のために観るのか」という問題だと思いますがね。
ギャング映画も数あれど
『グッドフェローズ』(原題:Goodfellas)
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ニコラス・ピレッジ マーティン・スコセッシ
製作:アーウィン・ウィンクラー
製作総指揮:バーバラ・デフィーナ
撮影:ミヒャエル・バルハウス
編集:セルマ・スクーンメイカー
配給:ワーナー・ブラザーズ
出演:レイ・リオッタ、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、ロレイン・ブラッコ、ポール・ソルヴィノ、フランク・シベロ、サミュエル・L・ジャクソン、ヴィンセント・ギャロ (wikiよりスタッフ抜粋)
もう公開から25年も経っているなんて……まったく色褪せてないぞ!?
私のスコセッシの歴史
スコセッシ監督作品はまず『タクシードライバー(76)』を観て、なるほど語り継がれるだけのことはある作品だといたく感動しまして、そっからデニーロで追っかけたりディカプリオで追っかけたりいろいろと観ました。
ちょっと前の話題ですが「ウルフ・オブ・ウォールストリート」が日本でも劇場公開になったときの話。第86回アカデミー賞ですね。「ゼロ・グラビティ」無双の回。
またも主演男優候補にノミネートしたディカプリオに、ついに、ついにオスカーの名誉が! しかも作品の出来も最高! これもろた!と、ぬか喜びもつかの間、旋風吹きまくっていたマシューマコノヒーにあえなく王の座を獲得されてしまったわけでした。
マシュー・マコノヒーの存在感や身体を極限に絞った鬼気迫る演技はもちろんグレイトで、結果には納得してるんですが(謎の上から目線)……やっぱり選考会の方々はディカプリオ嫌いなんですか?
まあいい。次の機会があるさ、レオ!(本当にあるかなあ)
ジャック・ニコルソンも受賞は50歳のときだから!
話が逸れました。
レイ・リオッタのユース感が良い
イタリア系マフィア所属のギャングスター、ヘンリー。
彼が作品の主人公で、冒頭から中盤からたびたび挟まれるナレーションも彼自身の台詞〈モノローグ〉になっていて、半分自伝的というか、といってもスタンドバイミーの始まりの回想とはちょっと違っててあくまで画面と同時進行、もしくは何かをほのめかして、すぐにその答えとなるシーンになる、みたいな作り。この辺りの演出をメタフィクションというかは私としては疑問が残るところ。あくまでも語る内容は自分の周りだったし。いや、メタの判断材料はそこじゃないのは解ってるんだけど。
主人公ヘンリー役、レイリオッタ。
画像は若いうえにヤクが決まってるときなのでぴんとこないかもしれませんが、変に有名なところでいうと「ハンニバル 脳味噌 うん旨い」のあの人です。
いや、もっといい役ももらってるんですけど。今作グッドフェローズが彼の出世作ということになっています(『フィールド・オブ・ドリームス』のジョー演ってたじゃん!)。
基本はこのヘンリーを通してマフィアの悪事や抗争、その顛末を半自伝的に描いていく。ヘンリーの脇を固めるのが名役者のロバート・デ・ニーロとジョー・ペシ。二人ともスコセッシの常連ですね。
新房作品の斎藤千和的な。大林信彦作品の尾美としのり的な。
不遇なジャケット
黒服を身にまとい並んだ三人。配置がちょっと気になる。
なんでデニーロが真ん中でレイ・リオッタがサイドに甘んじてるんでしょうか? どう見てもレイ・リオッタの映画なのに。
このころデニーロは既に『タクシードライバー』や『ミッドナイト・ラン』などが大ヒットし、スター中のスターでした。レイリオッタも「フィールド・オブ・ドリームス」は公開されてるはずなんですが、でもそのくらい。
思うに、広告の策略があったんじゃないかと。 アメリカにもそういうのはあるんでしょう。
デ・ニーロなら観に行こう、みたいな心理作り。リメイクされたスタートレックの宣伝ポスターの案件を思いだしますね。
で、何が面白かったの?
なつこ「ギャング映画ってどうせドンパチやってバタバタ死んで、成り上がったけど裏切りやら自滅やら警察の介入で主人公も死んじゃう悲劇、を美化しました。、みたいな感じでしょ。ピカレスクロマンってやつ。栄枯衰勢は世の常」
――どうせとかやめなさい。失礼な。
確かにその方向性でいうとぱっと思いつくのでも、スカーフェイス、カリートの道、BROTHER、なんかは該当するかもしれません。
加減なしの危ない奴ら、がいい
もうね、始まり方から引き込まれるんです。
上のトレイラーがその始まりのシーンなんですけど。 グッドフェローズ三人衆が車に乗ってどこかへ向かってる。 そこで何か物音がすることに気付いて、わき道に逸れトランクを確認。 すると血塗れで重傷の男が積まれている。
「あっ、身に覚えのない犯罪を押し付けられちまった。こりゃ困ったどうしよう的な展開だな」
私はそう思いました。しかし一瞬でその予想は裏切られます。
ジョー・ペシ『まだ生きてやがったなこの野郎!』 (重体の男をナイフでめった刺し、デニーロもすかさず銃を打つ。この上ないオーバーキル)
私『…………』
この開始数分間で「はい、俺たちマフィアっす。血も涙もないアブナイ人間の集まりです」ってのを観客に提示したわけです(そしてちょっとヒキ気味のレイ・リオッタ
見事なイントロダクション。こっからはヘンリーの成長奮闘(?)物語になってきます。
ジョー・ペシがいい
役者がカッコイイです。 まずジョーペシが演じているトニーというキャラクターが心底めんどくさい。
短気っていうかどこでキレるスイッチが入るのかすらわかんない。マフィアは喧嘩っ早いとかそんなレベルじゃない。酒飲んでてちょっとジョーク言ったらブチ切れ。
このへんはアウトレイジでもありましたね。酒入るとめんどくせえなーて奴。酒の席で「バーカ」っていうと「誰がバカだこの野郎!」って胸ぐらつかみ合いになる流れ。あれのさらに上。少年に発砲までしちゃうおっかなさ。
「カジノ」を先に観ていた私は「またジョーペシがファックファック言ってるよー」と終始彼のイカれっぷりにご満悦でした。
デ・ニーロがいい
出番はレイに比べるとやっぱり少ないんだけど、良き兄貴分でいつもヘンリーの味方で後押し。まあ、マフィアの言う「俺はお前の味方だから」ほど信用のない言葉もないですが……。あれです、アウトレイジで頻出した「形だけだからさあ-」に近いものを感じます。
このシーンのBGMで流れるCREAMの『Sunshine of your love』と、ニヤリとするデニーロが最高にかっこいい。 聴けば、ああこれかとなります。
〈https://www.youtube.com/watch?v=oxxXoyatS_8〉
RHYMESTER『ウワサの真相』でサンプリングされておりますので、聴き馴染みもあるのではないでしょうか。
長回しがいい
ヘンリーが高級レストランらしきところに食事に向かうシーンでの長回しが印象的。
ステディカムで背中に張り付いて、厨房抜けて通路を歩いていくヘンリーと妻をぐぐっと追っかけるのが目を引かれるんですよ。 あとマフィアの連中とデカいヤマ(強盗なんですけど)の計画を練るときに参加するメンバーの紹介シーン。全員が集まったバーを舞台に長回しでざらーと説明していく。どえれースタイリッシュ!
(サミュエル・L・ジャクソンがちょい役で出てたのは気付いたけど、ヴィンセント・ギャロは一体どこにいたんだろう)
『グッドフェローズ』より
物語も佳境に入ってほぼラストシーン。ほぼです。
裁判にかけられたヘンリー。ここで、いつものナレーションでモノローグだった台詞が画面に映る本人の口と連動します。さらにスクリーンというある意味限りなく厚い壁を越えてこちらに語りかけてきます(画像じゃわかりにくいですが、カメラ目線でちょっとした演説に入ります)
これはもう実に美味しいメタ演出ですね。ここでアプローチを変えてきたことで、札束で頬を叩かれたようにハッとしてしまいます。
ラストカットには言及しません。意味がちゃんとあるものだったので。あなたの目で確かめて受け止めて下さい。とても面白かった、とだけ言っておきましょう。
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おしまい。
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