『時光代理人 -LINK CLICK-』観ました。
中国アニメの吹替版。舞台は中国で、デリバリーした春巻から虫が出てくる日常描写など、”らしいな”と思いながら観ていました(他意は無し)。翻訳時に日本文化に寄せただけか不明ですが、中国でも「飯テロ」文化はあるようです。といいますか、このアニメこそが飯テロと呼んでもいいくらい調理描写・料理描写にも熱いリキが注がれてます。そこも注目ポイント。
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簡単なあらすじ。感想文にあらすじとか書くもんだったっけ?
しがない写真館を営む二人(トキ/程小時、ヒカル/陸光)には特殊な能力があり、トキは写真の撮影者の精神に乗り移る、ヒカリは写真の世界で12時間以内に起きた出来事を把握することができます。
この能力を見込んでなのかなんなのか、ともかく特殊な依頼が写真館の大家の娘(リン/喬苓)を通して彼らにもたらされる……というのが第1話のタイトルアバンの内容。
この溌剌ガールはCV:古賀葵。演技の(声域の?)幅が広がってきてます。
ローファイなヒップホップの親和性も良し。
意識に入り込んで情報を抜き出す、となると『インセプション』をちょっと思い出すようなモチーフですが、本作は改変を絶対に引き起こさないように行動するのが二人の間の決め事になってます。
この「依頼」は一体どこから来るのか、二人はどれくらい世間から認知されてるのか、そもそもそんな能力はどうして使えるようになったのか、ということは触れられません。第1話だから、というのもあるでしょうが、序盤からあまり説明的になっても楽しくないですし、そのくらいは「保留」で観ていけます。
「第1話」っぽい会話がどうにも気になるヤマイ
依頼を持ってくるのと同時に、大家のキャラクターとポジション、二人との関係性を視聴者に提示するための会話が展開されるんですが、ちょっと違和感がありました。
かんたんに言ってしまうと、「どうしていまごろそんな内容の会話をするの?」という不自然さがある。「今頃」というのは、三人が構築した関係性が成り立ってそれなりに時間が経っているはずなのに……という不自然さ。
会話のなかで関係性を説明・提示すれば、それ即ち上手な説明にはならないんですよ。第1話ですけど、「こいつはこんなこと言うのか?」がノイズになる。彼を知ったばかりで何も知らないはずなのに、おかしいですよね。おそらくは、こういうことを言うような人間にはリアリティがない、とかこういう人間は嫌いだという観念が私のなかに渦巻いているんだと思います。
気にしすぎると気が滅入るから、見て見ぬ振りが正解なのかしら。
第1話「#01 エマ」
そんなこんなでミッション開始。「ダイブ」開始。
エマという女性の体を借りて、とある企業の不正を暴かんと二人は機を伺います。
彼女はこの企業のCFOの秘書ですが、彼女の体で突飛な行動をとってしまうと未来が変わってしまう危険があるため、基本的には”エマらしい”行動を遵守することになります。余計なフラグは立てるな!勝手にボタンを押すな!ということでしょう。
彼女の不遇(ハラスメント)を知りながら具体的に何かをすることも出来ません。
このもどかしさが本作のひとつの味で、知ってしまったけど手出しはできない、でもこのままじゃやばいんじゃないの、とも思わせるタイムリープものあるあるのサスペンスも踏襲しつつ、シリーズの大筋で繰り返されるであろう「潜入ミッション(なりすましミッション)」のデモンストレーションを第1話で展開しているわけですね。
設定がやや突飛なので、”ルール”含め視聴者へのチュートリアルが必要。構成としていい感じです。
意外に大きい振れ幅(小清水亜美はすごい役者です)
そんななか、依頼は完遂したものの、これは『時光代理人 -LINK CLICK-』の第1話なわけで。
実は未来は大きく変わっていて……(←未視聴の方に配慮したオブラートな表現)といった展開に発展し、活劇アニメかと思っていたのに意外なビターさ(←オブラートその2)もあり、この作品の振れ幅や視座が意外にも広いことにちょっと驚かされました。
ともかく作品のルールはなんとなくわかった、と思わせる機能は果たした第1話でした。
なによりエマを演じた小清水亜美がめちゃくちゃいい。涙ぐんでうったえる演技なんかは心を打たれるものがありました。親はずるいよー、まったく。親との団欒はずるいよー。
初回のゲストで終わってしまうんだろうか。エマの再登場に期待してます。
背景美術など
あとは背景観術がいいですね。絵で。
本作の美術を見ると、ともすれば「リアルな背景」と受け取る方もいるんじゃないかと想像します。新海誠っぽいよね、と思うのはそんなに間違った感覚ではないはず。なんせ監督のリ・ハオリンは『詩季織々』も手掛けた方で、『詩季織々』を観れば察しがつくように、多大に氏の影響を受けています。
それを踏まえても、私のなかでは新海誠映画から1.5歩下がったあたり、という印象を持っています。新海誠映画に1.5歩及ばない、じゃないですよ。「写真ではなく絵であること」に寄せているという意味合いです。
特に『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』あたりはスミアをがんがん押していた時期だった気がします。
新海誠っぽいな、の感覚と直接関係はないかもしれませんが、本作の音楽は天門さんが参加されてます。もしかするとこの相互作用が初中期の新海誠フィルムを想起させたのかも。どうしてもセンチになっちゃうあの感じ。
暗い時間帯と光の温度感
「時光代理人」第1話の本編(エマに憑依してミッションが始まってから)は、残業中のエマが遅い食事を摂るところからスタートします。
オフィスは暗く、エマのデスクだけがほんのりと光っている。窓の外のオフィス街も、夜、ビルから漏れる光が眩しい。しかしそこにポジティブな煌めきはなくて、やはり冷たさがある。全然羨ましく見えない中国像がなんとなくある。そんなところも見どころだったかなと。
暗い、というのはアニメだと青色になるんだなという発見もありました。
エマが帰宅して部屋の照明をつけたときの、光源の変化と影の移動がなかなかよくて、そこは数回繰り返して観たりしてました。
光と影の付き合い方がいい感じの作品なので、小清水亜美の演技目当てでも、疲れたOLがワンルームに帰ってくる瞬間の描写目当てでもいいので、チェックしてくださいな。
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そんな感じで〈冬アニメ『時光代理人 -LINK CLICK-』第1話を観ました〉でした。
おしまい。
第2話も観ていこう。
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