『ビルディバイド -#FFFFFF-』を観ています(後ろの文字列は「コードホワイト」と読みます。ビルディバイド、コードホワイト)。「来るなら来なよ」という棟梨ひよりちゃんの台詞が哲学チックで気に入っています。
2022年の春クールが始まり、何の気無しに第13話(第2シーズンの第1話)を観たら、キャラクターは可愛いしダボッとした着こなしも可愛いし、召喚されるカードのユニットも肉感的で可愛いし、エフェクトも悪くない。OPもEDも見どころがある。良作の雰囲気あり。ハケンとかオーラとか、そんなことは言わないが。
第13話、ひよりの決め技が雲を打ち晴らして雨を降らし、虹を出してタイトル回収する流れも綺麗でした。要するに、ノーマークでした。その意味での「意外な」「掘り出し物」。
第2シーズンから観始めた不義理のせいで、第1シーズンで築かれた世界設定がよくわかってません。どうやら第1シーズンの3年後らしい。そのうちに第1話から観返す予定ですが、観返してもゲームのルールはやっぱりわからないんだろうなあと。
で、「リビルドバトル」というゲームに興じている主要キャラクターたちを追って見ていると、台詞の性質が他のアニメとは少し違うなと思ったのです。
キャラクター達の台詞は、「行動を宣言する」というスタイルを取っているのです。
「○○でプレイヤーを直接攻撃!」みたいなことを言うわけです。遊戯王だったら「○○を守備表示。ターンエンド」とかああいった感じのコマンド読み上げスタイル。
これはリビルドバトルのゲーム性に起因するものでもあり、この手のカードゲームものの宿命でもある部分で、たぶん、だいたいのカードゲーム(『遊戯王』や『WIXOSS』など)に共通してるルールだと思います。
ちなみに、作中のリビルドバトルは審判が存在せず、ターン制です。
ま、「ポケモン」の発見はさておき、「行動を宣言する」というアクション(と台詞回し)がアニメ的に向き不向きがあるのかどうか。
けっこうアリじゃないかと思うのです。
「行動を宣言する」台詞回しは珍しいかも
たとえば、将棋や囲碁は対局中に「喋る」という行為がほとんどないですよね。「王手……」くらいじゃないでしょうか。あれは「王手(という状態)になりましたよ」という宣言ですね。あまり将棋に詳しくはないので、「成り」の宣言とかもあるかもしれませんが、「3六歩」とかいちいち言わなくてもいいのは確か。
一方、麻雀は「ポン」とか「チー」とか「カン」とか、あとは「ロン」とか発声どころがあります。これらはどちらかいえば「ポン(という行為)をします」という宣言です。ポンという状態、ロンという状態ではない。
また、スポーツに目を向けると、サッカーやバスケットなんかでは「パスをくれ」とか「シュートを打て」とか、あとは味方の名前を呼ぶとかそういった台詞はあるにしても、でも宣言とは違います。「パスをします」と言ってパスをするわけではないので。
むしろ余計な話をするとペナルティの危険があります。卓球やテニスはそういう部分に厳しいイメージ。
ゲームのルール上、台詞の量が増えるのがカードゲームアニメ
変な回り道をしましたが、ビルディバイドのようなカードゲームは、アクションを宣言するスタイルの競技ゆえ、必然的にプレイ中の台詞量(モノローグではなく、実際に発声するダイアローグの量)が増えるのではないかと。
「行動を宣言する」台詞のもうひとつの機能
「行動を宣言する」とその内容が実際に起こります。もちろん、阻止が入ったりカウンターを受けたりして攻撃が100%成功するわけではないですが、「攻撃の意図」は発露します。
ということは、これは視聴者への「(先読み・リアルタイムの)状況の提示」にもなっています。
つまり、行動の宣言でありながら「説明ゼリフ」でもある。
自然な説明台詞
不自然で下手な「説明ゼリフ」は好事家に忌み嫌われます。少なくとも私は嫌いです。
『ビルディバイド』のキャラクターたちの”宣言”は説明調でありながら、本来の機能が「説明」の要素を含んでいるため、わざとらしさがない。脚本家のドヤ顔が見えない。純正の説明ゼリフと呼べるのではないか。こんなにも説明ゼリフなのに、バトルを2回観てからそれに気づいたんですから。
実はすごい機能なんじゃないか、と思った次第です。
ルールが依然わかってないけど何が起こってるのかはなんとなく理解したかのような状態になれる魔法がかかってるのかもしれません。
遅延行為問題へのひとつのアンサーを見た
話は変わって。
第17話(第2シーズンの第5話)では、「競技中に遅延行為まがいのおしゃべりを始めて試合の流れを止めちゃう問題」が出てきます。身内同士でいざこざが始まり、相手に「待ち」が発生しているのに、こういうときの敵はなぜか優しい。なぜってそれは、脚本家や演出家が自分に嘘をついているからなんですが。
ビルディバイド(バトル)には審判もいないしターン制だからそこまで気にしなくていいのかもしれないけど、視聴者としては「あーまた始まってしまった(あとでやれ)」と思ってしまうのです。
しかし、第5話ではこの問題にひとつのアンサーを出してきたというか、そんな片付け方ありなのか、とついつい顔がほころびました。そこもこのアニメを好きになったポイントです。あまりに強引だし、この演出がこの手の問題の正解では決してないと思いますが、まあたまにはこういうのもアリである。とかなんとか言ってお茶にごす。
おしまいに:『ビルディバイド』なかなか面白いぞ
やけにはっちゃけた「KUGE(公家)」幹部に檜山修之が出ていて、これがハイテンションな好演ですごく良くてですね。1話の出演で終えるのはもったいない。狂言師というキャラクターが個人的にツボに入っている贔屓目を抜きにしても、面白かったです。
樽へのこだわりも意味がわからない。
回想の演出に4:3を挿入する真面目さも好きです。
手のアップが多いアニメでもある
あとはカードゲームのアニメだから、「カードを手にした状態のカット」というのが割りかし多いんですね。カメラも寄りが入ることが多めで。
そこにリキを入れて丁寧に作画しているので、手をじっくり観察したい吉良吉影タイプの視聴者にも楽しめる「手鑑賞アニメ」だと思います。
本編中でも色んな手の所作が窺えます。手フェチになりそう。
EDの『アダムの創造』を模したカット、あれはなんだろう。
最初から最後まで観通すと理由はわかるはず。
そんな感じで〈『ビルディバイド -#FFFFFF-』の意外な掘り出し物感〉でした。
おしまい。
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