本来の続きとして書きたかったジャンプカットシークエンスについて。
「シークエンス」自体が、定義揺れ/認識ズレしているような用語なので、このあとの「ジャンプカットシークエンス」も意味合いがハナから二分してしまいそう。なので、いつものごとく話半分で読んでいただけると過剰に責められる事態も避けられようというものです。
どこからともなくオレ定義。どうぞそのつもりで。
ジャンプカット・シークエンスなる用語の出典の本を探していまして、昔読んだ本を見つけました。
演出レファレンス(Reference:参照)系の本で、なるほど勉強の入り口にはそこそこいい内容でした。あまり深くは突っ込んでいなかったので、「この映画のあっこの部分、あっこで使われていたのが◯◯って技法だよ」「大抵はこういう効果を期待して使われるものですよ」
みたいに1ページにつき1技法のペースで紹介していくものです。2002年作成だから、紹介される映画もそれ以前で……それは構わないんですが、紹介されている媒体が名作のときと凡作のときがあったりして勉強とともに鑑賞を楽しめるときとムラがあったり。
この本で仕入れた知識が、ブログのネタや血と肉に一役かってくれています。
15年経っているからネタバレとか著作権侵害でお縄になることもないでしょう。
掲載されていた技法のうちのひとつ「ジャンプカットシークエンス」にも大体の理解はついてきたんですが、ジャンプカットシークエンスの亜種といいますか、ちょっと形式の違うジャンプカットもよく見かけるのでそっちはなんと呼べばいいのか、いまだに疑問なのです。
ジャンプカットシークエンス(パターンA)
まずは、上の本に載っていたジャンプカットシークエンス。
シーンとシークエンスの違いは「シーン < シークエンス」、つまりシーンの連なりがシークエンスと呼ばれるひと括りに発展する、というのは『カット、シーン、シークエンスの違いの整理』の回でまとめたつもりです。 余計なオレ考察を除けば、これは信頼できる情報です。
その例題として載っていたのが『コレクター』(97)。
ジョン・キューザックのやつでもなくて、蝶々収集家のやつでもない、モーガン・フリーマンが主演のほうです。デンゼル・ワシントンのあれは『ボーン・コレクター』です。
コレクターのなかで、アシュレイ・ジャッドがシャドーボクシングをするシーンがあって、そこにジャンプカットシークエンスが使われている──とのこと。
それがこれ。
画面が暗くて観辛いかと思いますがご勘弁。
アシュレイ・ジャッドが小部屋のなかでシャドーボクシングをしているのですが、数カ所カットされています。これがジャンプカットシークエンス。
(※動画軽量化のために数カ所アクションごと抜いているので、実際はもう少し長い時間にわたってコンビネーション練習が描写されてます)
ジャンプカットとの違い
『灼熱の卓球娘』や『-ファントム・ワールド』で紹介した通常のジャンプカットと違う点は、
- アングルやサイズ感が統一されていない。ディレクションは守ってる。
- アクションが完結するまでのどこかを中略するのではなく、アクションの前半/後半を省略することで、レコードの針飛びのように動作の繰り返しを強調している。
大きくはこの二点。
この②の条件から『終末なにしてますか?-』のジャンプカット(クリックでgif展開)は、どちらかといえばジャンプカットシークエンスに分類するべきかもしれない、と以前言っていたわけです。それなら画面動のニュアンスも頷ける部分がある。
では再び『コレクター』の話に。
この場面、シーン的にはシャドーボクシングをひたすら行うシーン、シークエンス的には(物語上の役割としては)暴漢に備えてのトレーニングのシークエンス……なのだが、ぶっちゃけどうしてジャンプカット”シークエンス”扱いなのかは謎。シークエンス内でジャンプカットを行っているから、ってことなんだろうけども、これは果たしてシークエンスなのか? そんな疑問が。
同作品内で、もうひとつジャンプカットシークエンスが使われているのでそちらも。
監禁された被害者に投与された薬について考えるモーガン・フリーマン。
監禁された被害者に投与された薬について調べるモーガン・フリーマン。
これは先の「反復の強調」よりも、長時間同じ作業に没頭している様子を示す意味合いの強い見せ方。
メインの被写体モーガン・フリーマンは同じような動作&ステータスだけど、周りに映っているもので時間の経過を見せる。ここでは、清掃員の仕事が終わって、事務員がさっと画面からハケる。周りはつつがなくそれぞれの時間が動いているんだけど、フリーマンは停滞しているような。
同じような例だと、「小説家が原稿に何か書いてはグシャグシャポイ、何か書いてはグシャグシャポイ」を繰り返しているうちに、壁の時計は朝を迎えるor窓の景色が夜から朝方に変わる、みたいなそういう系統の時間経過演出。「あー、もう朝かよ」とか野暮なことは言わせないで済む。
ジャンプカットシークエンス(A)まとめ
つまりJCシークエンスっていうのは、同じように撮ったいくつかの「シーン」をジャンプカット風味の編集でいわば乱暴にも見えるように繋げ合わせてつくったシーンの連なり──シークエンスということでいいのではないか。うむ、納得したようなしてないような……。
ジャンプカットシークエンス(パターンB)
ジャンプカットシークエンスはそもそも、もっと大きな括りにあたる”モンタージュ・シークエンス”の一種なわけですよ。「また新しい言葉追加してくるんじゃねえよ」って思われてるかもしれませんが。私のせいじゃないし……。
モンタージュ・シークエンスっていうのは一例でいえば、
- 水着でキャッキャする女の子たちの一枚絵が何枚が流れる
- 各部活の練習風景を何秒かずつ流す
- 渋滞する道路や密集した人混みを映す
──など、言ってしまえば「それっぽい映像」を集め繋がりを出す手法。海でのバカンスっぽいシーン、放課後の校内っぽいシーン、都会の朝っぽいシーン、を見せることで観客にさらっと状況説明をする感じですね。基本的にはセリフ無しで映像だけが流れていくイメージです。それっぽいBGMは多用される。
その亜種なので、シークエンスのなかでジャンプカットの味付けがされているものこそが、ジャンプカットシークエンスって呼ぶのが適している気がする。
つまりこういうやつ。
ジャンプカットシークエンス(B)の実例……?
メアリちゃんかわいいなあ。
それはさておき、ミケに甘んじていた芽亜里が掃除を命令されるシーン。シーン……。
「床掃除しといてね」からの、
掃除道具を引っ張り出して/バケツに水張って/雑巾絞って/
──の動作シーンをそれぞれ一部分を残してカットして繋げる。これだけ端折っても各段階の作業内容は観客に伝わります。
「床掃除」というシークエンスをジャンプカット風味で編集しているのですね。定義的には。第8話でも、夢見弖ユメミがファンクラブ会長との握手の汚れを楽屋で洗うシーンも同様の切り方が用いられてました。
ほかにも、
駄菓子屋がれんちょんの御見舞に向かうところや、
ウサミン星のアイドル、ウサミン(17歳)の朝準備シーンなど。
このての「それぞれ独立した動作でもあり連続性もあるシーンの繋ぎ方」は、先述のパターンAとはけっこうテイストが違うと思うんですが、同一呼びでいいんでしょうか。
使い分ける必要があると思うのでジャンプカット・シークエンスBとする(※完全にオレ定義ですので、その辺で使ってしまうと村八分喰らうかもしれません)
のんのんびよりもデレマスも、カットごとに付くSEがいい仕事してますよね。フォーリーとか言ったりするんですが。
JCシークエンスのまとめ
パターンAのほうは、一応しっかりした出版社あら出ている本のなかに掲載されていた内容なので信頼性は低くないかと思います。自身の目で確認されるのも良いでしょう。ちらっとさっき覗いたら中古価格で500円切っていたので、参考資料としては十分買いっちゃ買いな価格ですね。
パターンBは私が勝手に名付けたので、どなたか正式な名称、それなりに通じてる名称をご存知でしたらぜひ教えてください。
そんな感じで〈ジャンプカット・シークエンスについての疑問〉でした。
おしまい。
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