『魔女の旅々』第7話。対立と分断していたコミュニティが魔女の介入により、ひとつに変化を遂げる話。そのアバンが面白かったです。
第7話のアバンはAパート「旅人が刻む壁」の導入にあたり、「ニケの冒険譚」を読むイレイナ(「過去1」とする)と、当時のニケの様子(「過去2」とする)が本読みを通して前後するような構成。全てはニケに思いを馳せるイレイナの空想と考えても可。
一国の壁をめぐる物語。
そこのアバンで出てくる本の使い方が面白かったです。
本で演出する魔女と一国の壁
ここでうまいなと思うのは、「ニケの冒険譚」が本の形態、つづりの形態をとっていることです。
その効果が面白く発揮されているのが、ニケがお役人のおじさんにハッタリを吹き込むところ。
「そういえば、向こうの壁にも文字が彫ってあったなあ(この時点ではまだ何もない)」なんて言うと、お役人はまずいといった顔を浮かべます。
次に(過去1の)暖炉の前でくつろぐイレイナへとカメラが戻り、「ニケは向こう側にも同じ話を吹き込んだのです」と視聴者への説明が入ります。
ここで、イレイナがちょうど次ページに移るためにページをめくるんですね。
本のページをめくる=壁を飛び越える
本の見開きを「A1│A2」や「B1│B2」と位置づけるとするなら、「ニケは向こう側に行っても同じことを言いました」と読み上げた内容は「A2→B1」とページをまたいで記されていました。
イレイナが本をめくる動作と、ニケが壁を挟んだ向こう側に移動する動作を重ねているわけです。うまい。面白い。
本になぞらえられたコミュニティ
こちら側とあちら側はもとは一枚の紙(国のたとえ)であり、表裏一体、同じ穴の狢(?)とでも言いますか、そんなシニカルな視点も感じさせます。のちに、ひとつの集合だったのだと気づくことも暗示させますね。
そして、それを俯瞰的に見ている、(未来の)魔女・イレイナ。第三者であり外部の神的存在である魔女には人間の建てた壁などは存在していないに等しく、両者間を軽く飛び越えて行き来するのです。イレイナは結局壁を拝めなかったけど。
暖炉の燃え盛りは軋轢といがみ合い、なのか?
最初は暖かい家庭のアイテムに思えた暖炉の火も、国民のトラブルの象徴なんじゃないかと意味深に見えてきたりもして……。安全な距離感で火に接するイレイナ、恐ろしい子。
と、これは余談も余談でした。劣情を無責任に書くんじゃない。
本とは記録であり、歴史である。分断された国の寓喩と魔女の関係性を「本」を通して演出したアバンでした。グッド。
第7話「旅人が刻む壁 / ぶどう踏みの少女」
脚本:筆安一幸
絵コンテ:高橋 順 平池芳正
演出:髙橋 順
第7話の絵コンテは連名ですが、「旅人が刻む壁」が高橋コンテ、「ぶどう踏みの少女」が平池コンテだと思います。ソースも確証もないけど。平池さんがぶどうのほうに言及していたのは見た気がする。
おしまい。
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