意識的なきっかけとしては『フレームアームズ・ガール』の放送時に遡る。さらに言うならば本編のEDを観ていたときだったような気がする。BOOK的にフレームインするFAガール達を観たときにびびっと。
「効率の良い枚数節約&カロリーコントロール」について考えていた時期というのもあり、ワイプ(※技法については後述)の有能さ/コストパフォーマンスはなかなか優れているんじゃないかと思ってました。
そんな感じで一度気になると、天井のシミが悲しんだ人の顔に見えてくるような、ぱっと目をやった壁時計に「ああ、また7時50分だ!」と驚くような。とにかくずっと気になって頭のなかは三叉路とコインランドリーとワイプ演出のことでいっぱいでいっぱいで……。
それ以来、新規アニメでワイプ演出が出る度に恐怖すら覚えるようになりました。(大袈裟
手抜きなのか? どうなのだ? ずっと考えていたのです。
だからそろそろ簡単にでもアウトプットしてひとつ頭を空っぽにしようじゃないかと。思いつきなのでどうせ不時着軟着陸するんだが、どうぞおつきあいくだちい。(『いぬやしき』面白そうですね)
※『フレームアームズ・ガール』は拭き取るほうのワイプ(本来のワイプ)も小窓のワイプも両方頻出していたので、混乱するかもしれません。失礼、ご勘弁。
ここで扱う”ワイプ”について
(ほんとは「小森 霧が主役の『本編が本編じゃない』」の話数の画像が欲しかった)
右隅に別の画面をはめ込む、というか呼び込むような、バラエティ番組やニュース番組で一回くらいは見たことがあるかと思います。これがワイプです。いわゆる”小窓ワイプ”。
これが今回の記事のメインテーマです。
テレビ的にはこれをワイプと呼んでも差し支えないんですが、映像サイドから物言いが入りそうなので、本来のワイプはこういうものを指している、指していたんだということ含め補足の説明。
0:19あたり、あずきの顔から赤色のBGに切り替わるハート型の塗り替え。これも派生系ですが。あとは『ちびまる子ちゃん』の「あっけにとられた時のうた」EDでもワイプがあるので良ければ確認しといてください。
まあこういうのです、本来のワイプってのは。
wipeの語源が「拭き取る・拭う」というものなので、画面左や右からずずずっと次のカットが入ってくるようなものが本流です。車のワイパー、あれです。
ワイプのwikiを貼っておきます。
ワイプの実用性について
新規のアニメ観ていても小窓のほうのワイプが最近ほんとに多くなってると思うんですよ。気にしてなかっただけで数年前から大して増えてないかもしれませんが、とにかく目につく。
それこそ作品名を挙げていけばキリがないでしょう。たぶん今年だけでも100作は越えてんじゃないかな。
で、ワイプってそこまで普遍的な演出じゃないというか、いざ禁じられても画面づくりが苦しくなるような性質のものではないわけで。ディゾルブは使うな、フェードイン/アウトは使うな、みたいな厳しい要求ではない。
でもこんなに高確率でお目にかかるのはそれなりに汎用性が高いとか利便性があるってことだと思うんですよ。ワイプを使うことでいろいろと捗る部分がある……んじゃかないかと。
カメラとカットの切り替えが不要になる
キャラクターAとキャラクターB(あるいはB+多数)の会話の場面があったとしましょう。
対話シーンではリバースショットが基本です。あくまで基本。
キャラクターの台詞をオフにしたくない、AもBも喋っている顔を前から撮りたい──そんな場合は、カメラを移動せざるを得ない。上の画像のような、赤カメラと青カメラのポジションからキャラクターをそれぞれ抜く必要がある。となると アニメーターは画像内の右上と左下のようなカットを二枚こしらえないといけないわけで。
もちろん描くのはキャラクターだけではなくて、
背景美術も別のものになるし、動きがあれば原画動画の中割りがあり、撮影は入射光やらの角度を調整して、音響は環境音のLRを変える必要が出るかもしれない。カット(ショット)が変わればそれぞれ仕事が生まれる。当たり前ですが。
「ぐぬぬ」みたいに顔のアップでもやっぱり背景は少し映りますし。
そこで”作業の軽量化的打開策”の一種として、さきほどの「右上」の画面内に、「左下」のキャラクターを小窓ワイプに入れて放り込む。
本来カメラを振って別のカットになっていたものをひとつのカットに組み込んでマトリョーシ化することで、存在しかけた二枚目の原画/美術もろもろの作業は用意しなくても良くなる。
これはAと対話するキャラクターが増えるほど、カット数が増えるほどコストカットできる文量は増えることになると思います。(ワイプで使われるぶんは基軸の絵柄よりもデフォルメいた作画が多く、それ故カロリーも低くなる傾向にある)
こういう減量のメリットがあると私は思い至った。6月に。
各話に使用できる枚数についてはあまり良く分かっていませんが、この技法でコントロールできる部分が少しくらいはありそうな気がします。無責任だなー。
奥が深いワイプ芸の世界
ケチではなく節約、手抜きではなく省エネ、そんなスタンスでいきたい。(意味不明
あおり気味のタイトルにはしましたが、安直に「ワイプは手抜きだ」って結論には持って行きたくないわけで。好きなワイプ演出もありますし。
まずワイプってのは時空を移動できるんですよ(大袈裟
便利でしょ?
渦中のキャラクターの話している声が聴こえないような場所にいても、ワイプという小船に乗ってくることでFIXを継続したままの同じカット内に違和感なく入ることが可能。会話や接触なんかもできる。いかにもメタくて反則スレスレ。
↑これは『心が叫びたがってるんだ』のなかのワンシーン。
話題の中心はワイプのなかのキャラクターいっくん。「いっくん」がピンとこないであろう観客のために、参照がてら画面内に呼び出されるのですが、練習中か何かで彼はこの場にはいないんだけど、思いもよらぬチア子(いっくんの彼女)のぶっちゃけ話に驚いた反応を示す。認知は一方通行タイプ。
もうひとつ、意思疎通しちゃうやつ。
会話しているのはピンク髪/亜玖璃と、いまはフレーム外にいる天野景太。話題は上原 祐(ワイプのなかの 残念と思わせて意外とちゃんとしてた人)について。二人はアイコンタクトを取ってお互い照れる。認知は相互方向。これは観てて気持ちよかった。
引きの画面で拡大鏡みたいなワイプ
もともとサイズが小さいFAガールを「引き」で撮ると、さらに小さい顔の表情などはほとんど見えなくなるんですけど、そこを拡大する効果としてのワイプ。顔にポン寄りしないで済む。
スティ子かわいいよスティ子。
メインキャラ不在タイプのワイプ
キャラクターAを主に据えたりとは違うパターン。
背景美術で街の外観などの一枚目がパンしてるところに、会話するキャラクターが全員ワイプで登場する、みたいな。画像ないですが。
全員がデフォルメだったりするので素組みから合わせやすいと思われ。
あとは、ある対象物について主従つけて詳しく細部ごとに説明するときなんかも。
ガルパンでもこの用法は出てきてたかもしれない。自信ないけど。
マスクっぽいのからカットアウェイも兼ねたワイプ
なんだか「『あ』研究家」みたいな流れになってきましたね。ご勘弁。
『セントールの悩み』のワイプも使い方が巧みで、
大きいワイプを画面いっぱいに広げて後ろの画を一度遮断、カットアウェイの要領で次のカットに繋いでいくみごとな使い方を見せてくれました。これも気持ちいい。
ワイプとマスクと画面分割の分類ラインが難しいぜ。
ワイプの使い勝手の良さに敬服
とまあ。こんな具合にいろいろとバリエーションのある使い方ができるワイプが最近目につく、というお話でした。これで夜も朝まで眠れる。
小窓呼び出しのワイプ演出はだいたいが「SD寄り+バストショット」なので、簡易的なビジュアルから楽な書き方≒手抜き/力の抜きどころ、と見受けられてしまいそうですが、ワイプにも様々な顔があり奥が深い。もっとワイプには可能性がありそうです。
そんな感じで〈最近よく見かける「小窓ワイプ」を手抜きと断罪するのは早計だと思う〉でした。
おしまい。
バーゼかわいい。
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