【アニメ】カット、シーン、シークエンスの違いの整理【映画】

”通常の”映像を観るうえで覚えておきたい映像単位を大きく分類すると、

「ショット(≦カット)<シーン<シークエンス」

──である。

(※「通常の」と強調をはさんだのは、ワンカットで最後までいくタイプのものなどは大小の関係が逆転する場合があるためである)

 

ショットとカットの呼称が混同しているのは、もはやどうしようもないのかなと。「姑息な=卑怯な」の間違った使い方をこの世から駆逐できないのと一緒だと、そう受け取って欲しい。意思の疎通がはかれるなら、それでもいいかとも思ったりするし……。

で、そもそもカットは和製英語だよみたいな意見もけっこう聞きますが個人的には、

ショット=被写体などをどう撮るか(撮り方)

カット=被写体などをどう撮ったか(素材/フィルム)

という使い分け/考え方を支持したい。それらが積み上がっていき、シーンを形成したり、シークエンスを組み立てている。

 

テキストだけじゃやっぱり窮屈なので、まずはサイズの小さいところから実際に映像を用意して、具体的に説明することで己の理解を深めていこうと思う。フォローミー。

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「カット」とは何か

映画やアニメなど映像全般で使われる「カット」の意味を少し誤解してる人がよくする質問で代表的なのが、

「1カットは何秒ですか」「1カットはいったい何コマですか」

といった類のもの。

コレに答えるかたちで最初に宣言しておくと、

「カットは秒数やコマ数に制限されるものではない」

ということ。これは個人的な解釈とかではなくて、原則であり事実です。

1カットが45秒の場合もあれば、1秒の間に2つ3つカットが入ることもザラにあります。カット数はフィルムの切れ目で増えていくものなので。

アニメには実物のカメラもなければフィルムもないですが(基本的にアニメの作成は”要るもの”だけ描くため)、カメラやフィルムを想定して描いているので同様のものとして扱います。

幼女戦記3話5
幼女戦記』第3話より

-上のループしてる動画、男が書類の束を振るカットからスタートしてます。この動画の総カット数……わかりますか? 易しいカットが続いているのでわかりやすいですな(煽り

カット数は5です。

  1. 書類の束を振る男が去っていく
  2. それを見送る男の顔を映し、扉のほうを向く
  3. 扉を開ける男の手のアップ
  4. スライド扉を開ける幼女(ミドルショットで)
  5. 4からさらに後ろに引いて室内の外観を映す

──の5つ。

カットを数える単位は決まってるのかわかりませんが、そのまんま「5カット」とか言うことが多いです。
5番目のカットを指すときは「カット5(C5)みたいになります。

カメラで撮った映像を編集でつなぎ合わせていったひとつひとつの断片が「カット」です。

「ショット」との違い

4番目のカットの説明で「ミドル”ショット”」という言葉が出てきましたが、ショットの概念について考えるときは「どう撮るか」という視点が重要で、

たとえば胸から顔までを映した場合は「バストショット(クローズアップショット)」などと呼ばれ、

『こみっくがーるず』第4話
こみっくがーるず』第4話より

 

全身を映した場合は「フルショット」と呼ばれたり。

『こみっくがーるず』第3話
こみっくがーるず』第3話より

 

あとは見下ろすような画面になる俯瞰ショットや、見上げる煽りのショットなど様々です。

『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』第1話
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』第1話より

 

状況を補足的に説明する役割を持つエスタブリッシング・ショットなんてものも。

灼熱の卓球娘6話
灼熱の卓球娘』第6話より

 

要点の繰り返しになりますが、ショットは「何をどのように撮るのか」という画角やサイズについてのお話。そして画面から生まれる効果の話。

>>
このあたりの被写体とサイズ感についてはアニメ「いもいも」の第3話を科学するの記事のなかで少し書いているので興味があればそちらも参考にしていただければ……。今回は余談に近い話なので割愛します。>>

単面的な「ショット」と多面的な「カット」

『リズと青い鳥』みぞれ
リズと青い鳥』より

たとえば、みぞれが髪をとく上の動画についてショットとカットを用いて言い表した場合。

ショット視点なら、
「みぞれの横顔を左から・画面中央ちょい左寄りに・クローズアップ(-ショット)で撮るショット」──といった感じで、画面に写っている画的な構造/撮り方作り方についての説明として「ショット」を。

そうして撮れたフィルム(画面)をひっくるめて言及するときなんかに「カット」を使います。

カットが内包する情報は様々で、画的に「みぞれの髪をとく仕草を左からクローズアップで撮ったカット」とも表現できるし、物語上の状況から「のぞみ(吹奏部の仲間)と話しているカット」とも言えるし、動作をテクストとして考えると「自分のなかの感情を操作しようとしている(のが伝わる)カット」とも言い表すことができる。

「画面に映っているものすべて」がカットである、と。

だからショットよりもカットのほうがメタ的に上の存在のようではあるけれど、撮り方次第(ショット次第)でカットが担う役割や強度を殺すことも多々あるので、相互に支え合う関係だと思う。

画面に移っているカレーライスを指して、

「大盛りのカレーライス」がショットだとしたら

「息子の大好物」がカット、みたいな。

……。

これ以上は沼のような気がしてきたので次に行こう。

カットとシーン

シーンとカットの大小関係は基本的に「カット<シーン」

ひとつのシーンのなかにいくつかのカットが入ってるのが基本。言い換えるなら、いくつものカットでひとつのシーンが構成されているとも言えますね。

大事なのはカットとシーンのふたつの言葉が指す範囲/モノが大きく違うこと。

触れたいのはシーン? それともカット?

例えば人に感動したポイントを伝えるときに「犯人が罪を告白したシーンが良かった」とか「ヒロインが溺れるシーンにハラハラした」とか、そういった具合に言葉にしたりするんじゃないかと思います。「犯人が罪を告白したカットが良かった」「溺れるカットにハラハラした」はあまり言わないと思う(言う人は言う。が、それはより詳細にいたる話の場合で、そもそも言いたいことが違うと思われ)

犯人が罪を告白するシーン(仮)のなかには、犯人の顔のアップだったり、そばにいる刑事の姿だったり、波打ち際や崖などの背景ショットに事件当時の回想など、いろいろなカットが出てくるでしょう、おそらく。

※もしかしたら、告白シーンと「回想シーン」をわける人もいるかもしれない。短すぎる回想だと回想のカットと言うべき場合もあるかもしれない。そのあたりの判断については、半分 視聴者に委ねられている部分だと思う(私は物語の主軸が動いたらシーンが移ったと考えるようにしている)

そんななか、「犯人が罪を告白したシーンが良かった」と言われても、犯人の泣き顔にぐっと来たのか、被害者の妹の軽蔑する顔に惹かれたのか、もっと大味な物語の部分、犯行動機ややるせない事情に心打たれたのか。そのどれでもないのか、ふんわりとしかわからないわけです。

「昨日のパーティ楽しかったね」といわれても、スピーチが良かったのか新婦のドレスが良かったのかビンゴ大会が楽しかったのか、わからない。パーティが楽しかったのだけはわかる。それと似たようなものです。

ストーリーとしての感動なら、カットだショットだと言わずとも「〇〇のシーン」でそのざっくりした範囲、とくにここ! と限定しない一連の流れを指して使えば問題ないと。

ただ、「この泣き顔がいい」「ここの3コマ走りがいい」「この撮り方でBGMにこの曲を重ねてくる意味がさあ……」といった場合、一歩入り込んでカット単位で言及/説明する必要がでてくる。

混乱を避けるための作法でもある

「溺れるシーン」について話したいときに「溺れるカット」と説明を始めると、どれについて言いたいのかわからないくなる。溺れるカットは複数あるだろうから。

そんな場合に「水中からバタつくヒロインを撮ったショットのカット」といえば、少しは絞り込める。解決。

 

シーンの連なりがシークエンス

カットからシーンに枠が広がって物語のパーツも大きくなったのですが、シーンとシークエンスは物語の観点を踏まえつつ考えるとわかりやすいかと思います。

物語(を語る)上で「いまどういった状況(あるいは場面)なのか」に対応する解答が「こういった状況(シーン)です」と言えるかどうか。

そのシーンのひとつひとつはどういった目的を目指しているのか、どういったテーマの一部なのか。と考える。

スパーリングをするシーン、ランニングをするシーン、生卵を一気飲みするシーン……これからを束ねると「トレーニングのシーンの集まり」ができあがる。

これをトレーニングのシークエンスと呼んでもおそらく問題はないけれど、物語上この過酷なトレーニングが伝えたいものは、単なる筋トレ描写やボディではないはずで、「自分を奮い立たせてワンサゲンしようとしてる主人公の姿」こそがここで表現しているものであり、称するなら「再起のシークエンス」みたいな使い方がより適してるんじゃないかと。そうなるとシークエンスっていうのはいわば「手続き」に近いのかもしれない。

 

 

こうして世間に誤用が広がっていくのかな……なんて不安を感じつつ一旦筆置き。

そんな感じで〈カット、シーン、シークエンスの違いの整理〉でした。

おしまい。

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