Aimerさんのライブが好きです。
ツアーごと、ライブごとにセットリストも大きく変わるAimerさんの楽曲群ですが、おそらくこれからも根強い軸として会場のムードづくりに貢献していくであろう2曲。
イントロが流れると自然と手が動いてしまう「誘い曲」の『ONE』、手拍子があってこその完成形と言っても過言ではない後ろ乗りグルーヴが気持ちいい『カタオモイ』。
2曲の共通点が本日のテーマ、「手拍子」です。わーぱちぱち。
お客さんが手拍子で参加する(しやすい)このふたつの楽曲は、Aimerさんのキャリアというかライブ運びに大きく変化をつけた偉大な2曲だと思ってます。THE・古参アピール。
声を出さなくても一緒に奏でられることもポイント高し。
ゆえに。だからこそ。お客さんの呼吸をばっちり合わせて、拍子を合わせて、「○○(それぞれの地方を入れる)のみなさんは息ぴったりですね」と言わしてみてえもんだなと、そう願ってるわけです。
願ってるってことは、叶ってないってことですが。
日本人はリズム感が育ってないのか
以前、米津玄師のライブの観客の手拍子が気に食わないって話を書きました。「しっちゃかめっちゃかに手拍子しなくていから!」と、どこに向かって怒っているのか、よくわからない内容で面白いデス。
日本人はどうもリズム感がいまひとつ育ってないんですよね。U-40は演歌を主に聴いてきたわけでもないのに。だから、「いまだに」なんですよね、不思議に思うのは。
表での拍のとり方しか身についていないから──言い換えると裏の感覚が安定していないから、拍子の頭でリズムをとることばっかりになって、手拍子が正確な位置で打てなかったり、裏のアクセントなのに変なところで手拍子が入ったり手を動かしたりする。悲しい。違う現場の話ですが、余計なお世話ながら「演りにくそう……」と思うこともしばしば。
愚痴はこのへんにして、ふたつの曲の手拍子の違いを少し考えてみます。
『ONE』の手拍子は幹の強化
『ONE』のリズムの強拍は表拍に揃っています。いわゆる王道の4つ打ちのリズム。親切にもハンドクラップの音まで収録されている。
(再生すると音が出ます)
バスドラムと同じ位置、表拍に4つ手拍子を入れていけば基本的には曲が崩れることはありません。バスドラムの音がなっているポイントで手拍子がなっているのだから、調和するのも当然と言えるでしょう。
上の画像の赤い点で手拍子をすれば問題がない。実際にライブでの手拍子はここで皆さん打ってます。
「基本的には」というのは、リズムの流れが正しくても「静と動」の観点からすると手拍子が邪魔になることも多々あるからです。楽曲は生き物です。
4つ打ち、なんだかんだで良いですよね
4つ打ち、という大きなリズムの脈流のうえでギターが鳴ったりハイハットが裏の受け皿を作ったりしている『ONE』ですが、それができるのも4つ打ちのビート(リズムの反復)がしっかり固まっているからで。
ここからあくまでも私見ですが、ONEにおける手拍子の役割、観客に支えてほしいところはプリミティブなリズムの幹を太くすることだと思うんですよ。リズムの幹(根)となるバスドラムの代用とも言えます。つまり、このテンポで行くんだという強い流れ。
※2AやC(振り出しから~のところ)で収録されているハンドクラップはスネアの代わりだろって言われると困っちゃうんですが。サビのパート終わりに符点で入ってるハンドクラップについて追求されるのも困っちゃうんですが。
軽やかなメロディについて考える
形を細やかに替えながら繰り返し歌われるフレージング(メロディ)がありますが、基盤となっているのが、表のアクセントを4つ置いてから裏アクセントに変わるというもの。これが4つ打ちと絡み合い波のような縦揺れを聴く者に与えてくるんだと分析しています。
「raise your flag the only one」のフレーズを例に取ると、
赤い点、表拍の部分で「raise your flag(the」と表拍に合わせたメロが入り、「on ly one」は裏拍(右の円、点線の部分)に重点が置かれています。
同様に「ri sing sun」「heart of crown」も裏から入る気持ちよさがあります。
話がそれるのでこのあたりで割愛。
『ONE』の手拍子が安定する理由
逃げるようにまとめると、ONEの手拍子は安定しやすい。誰でも打ちやすいタイプの手拍子とも言えますでしょうか。
主な理由は、
- バスドラムが手拍子のガイドになっている
- 表拍の4つ打ちは馴染みがある(身に染み込んでいる)
- BPMも比較的高めなので手拍子の間隔も狭い
これらの要因から、すごく安定した手拍子が繰り出せる。手拍子が揃いやすいので一体感も感じやすいですね。高まる。
『カタオモイ』の手拍子はタメとツメが最重要
一方、まだまだ余地がありありなのが『カタオモイ』である。
ONEの手拍子がリズムの幹を担っているのに対し、カタオモイの手拍子の役割は、幹ではなく枝葉に近いと私は思っています。要するにスネアの代用だったんですよ。スネアと枝葉の例えがふさわしいかは微妙なところですが。
リズムを作る手拍子と、リズムに添えた手拍子。
もしかしたらそういった表現になるかも。ならんかも。
手拍子のイメージの違い
これまた私のイメージで恐縮ですが、手拍子がバスドラムに近いものとスネアに近いものがある延長として、音の伸びがある手拍子と伸びのない手拍子があります。このイメージを持って手拍子すると理解が捗ります。
こんなイメージです。4分音符と8分音符の違いみたいなものだと思ってもらえれば、はい。
『ONE』はリズムを大きく持続させていく目的なので「タァーン、タァーン…」と打っていけばいい。
しかし、『カタオモイ』の手拍子は休符へと続く位置にあるので、ピタッと音が止むイメージが最適です。つまり「タッ」のイメージ。タッ。
『カタオモイ』では手拍子が入るのは赤い点のついている2拍目と4拍目。1拍目と3拍目は抜きがおいしい。タメと言ってもいい。大事な1拍目と3拍目で各自「(ウン)」を意識してほしいんですよ。
無音(休符)をイメージしよう
1拍目と2拍目、あるいは3拍目と4拍目のブロックで「(ウン)、タッ」を意識する。
この「(ウン)」の意識感覚が育ってないと、ガイドがない曲などに出くわすと「タッ」の音のタイミングが合わせられず前後にずれ込む観客が増えてきます。一体感は失われる。高まらない。オーノー。
「ウン」を意識しない「タッ」だけの手拍子というのは、
「…………タッ、…………タッ」
みたいな感じで、ひとつひとつの手拍子の間隔が広いぶん、なおさらリズムのキープが難しいんです。
手拍子のテンポキープは歩幅をキープすることと同じ
これを歩幅に例えると、『ONE』が毎歩30cmで歩いているのに対して、『カタオモイ』は右足だけを使って1mの歩幅で歩いていくようなもの。
しかも2拍目と4拍目でタイミングを取ろうってことなので、そりゃあバランス取れない人が続出してもおかしくない。
だから「(ウン)」を間に挟むことで毎歩50cmの見なしを作って、1m地点の足並みを揃えましょうと、そういう話です(どうしてONEの30cmに対してこっちが50cmとやや長めな数字なのかはBPMの差異による概算です)。
まずはウンタンのイメージを掴むことが大事
カタオモイのサビのリズムはシンコペーションが含まれているので4等分の図というのも厳密にはやや正確さに欠けるんですが、わかりやすさ伝わりやすさ重視ということで勘弁してください。
ウンタンのノリの曲といえば
このように、2拍目・4拍目で手拍子を入れていく楽曲について考えていたら、ぱっと思いつくのがウルフルズ『バンザイ ~好きでよかった~』ですね。小学校で合唱しましたけど、アカペラだったので手拍子が必須でした。
スネア(ウンタンの”タン”)の音の位置で手拍子を入れる。このイメージわかりますでしょうか。
この曲も2拍目4拍目で手拍子を入れるのが可能なのですが、1拍目や3拍目に手拍子を入れると曲が死んでしまうわけです。曲のノリが曲のグルーブが。
あとは花*花の『あーよかった』とか。年齢がバレる。
このリズム感、大事です。
手拍子を合わせていい雰囲気を作ろう
同じ会場内に他のお客さんに対して手拍子がどうこうレクチャーぶってゴーマンかます奴がいる──。そんなことを知ってしまうと、せっかくのAimerさんのハイソなライブの興が削がれると考える方も大勢いることでしょう。すまんな。
説教をしたいとか断絶を作りたいとか、会場の雰囲気を悪くしたいとか客足を重くしてやろうとか、そういったことは全く考えてません。ほんとです。ただ、いい状態を作りたいという気持ちを持っているだけです(米津玄師ライブのエントリーでも同じ弁明をしていた)。まあしかし、それが煙たがられる要因だと気づかないといけないんですが。
次のライブ会場で一体感を体感できるのを待ち望んでます。
おしまい。
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