マイクロフォン16くらいが雑に語ること、お許し下さい。
Creepy Nutsのアルバム『CASE』、最後〈ラスト〉の曲『土産話』。
どうにもいつもよりRHYMESTER(ライムスター)を感じる。そりゃ実際に名前が出てるんだから意識もするわって感じですが、それだけじゃない。
トラックからなのか、リリックからなのか、わからない。相方への眼差しを詩にする、というテーマ感かもしれない。シンプルなフロウとフロウとが2組をつなげている実感だけがあります。
とにかくRHYMESTERなしでは語れない一曲ではあるのは間違い気がして、両アーティストに詳しい方に腑に落ちる内容の解説をたっぷり語っていただきたい。
私なんかでなく。
『Walk on』との結びつきを感じる「なあ 相方」
さて、歌い出しからちょこちょこRHYMESTERを感じさせるリリックやらフロウが入ってきます。
まず「なあ、相方」ですが、これは『Walk on』の「Guess-who’s-back」と同じアクセントというか、同じ言い方に聞こえます。
『Walk on』はアルバム『ウワサの伴奏-And The Band Played On-』にも収録されている曲で、BRAHMANのアレンジがめちゃくちゃかっこいいです。たぶん原曲ver.の2倍好きです。私が最初にRHYMESTERを聴いたアルバムが本作で、出逢い方としてはなかなかよかったんじゃないでしょうか、と謎の自負。
そんな『Walk on』のテーマは、ずばり三角形の一角、DJ JINその人です。
Mummy-Dと宇多丸がDJとは、DJ JINという男は、というテーマで歌っています。サビはDJ JINが3回カマしています。『鵺のなく夜は』で『Walk on』を思い出したファンも多いんじゃないでしょうか。やっぱすげーぜアニキ。
このDJ(パートナー)について歌にする、という部分が『土産話』と『Walk on』を密かに繋いでいると、そう思います。
出会い、結成秘話
あれは確かそう新大久保だったか?
「確か出会いはかっこいい 新山下のベイサイドファクトリーだった」というのが『肉体関係 part2 逆featuring クレイジーケンバンド』のMummy-Dの1ヴァース目にあります。
当時、中学生のワタシ。友人たちと「怨みつらみ妬み嫉み僻み、怨みつらみ妬み嫉み僻み」「ただ交尾交尾交尾交尾しただけ」とはしゃぎ合い、両の手の指を組んでは「愛と情けの命日さー!!」三昧。楽しかった。
あとはこじつけが強め。
「会話交わしたか忘れた」は、『Don’t Worry Be Happy』の「よりにもよってカードも忘れた」かもしれないし、「ワンルーム」の言い方なんかは『welcome 2 my room』のフックっぽいといえば、ぽい。このへんはニュアンスだけ拾った感じ。かなりこじつけがましい。
そんな盛り込み具合で始まり、とうとうキングオブステージRHYMESTERの名前が。
RHYMESTERの武道館ライブのDVD
RHYMESTERの武道館のライブDVD……『KING OF STAGE Vol.7 ~メイドインジャパン at 日本武道館~』のことだと思いますが、これを観ている年末とくれば、2007~8年くらいですかね。ちょうど活動休止に入っている頃でしょうか。
メイドインジャパンは総勢71人のゲストを招集した再現不可能の”伝説のライブ”で、FG勢も(そして童子-Tも)結集したライブです。だから、”もしも”は「この人たちとの共演(もちろんRHYMESTER is BACKも条件のひとつでもある)」だったかもしれないな、と思うわけです。
R-指定が見つめていた武道館ライブのDVDの裏面には何があるのか、画像はあえて載せません。てめえの手で探すしかないのさってことでここはひとつ。
フリースタイルダンジョン放送開始。2015年
「シラフで酔狂」といったセルフサンプリングを経て、フリースタイルダンジョン。
私の記憶にも根強く残っている2015年。11月でしたね、神戸のライブの後に教えてもらった「CHICO CARLITOとR-指定のバトル観た?」。あれから10年も経ってないけど、随分と時間が経ってる。ほんとうに大事になっている。
「回り始めた歯車」のところの、「まわり、」の譜割りの塩梅もいい。
『たりないふたり』発表。2016年
もとは2012年、若林正恭と山里亮太から生まれたキーワード『たりないふたり』。同名のアルバムを2016年に発表。
「生業」「助演」とタイトルのサンプリングに続いて、「ライバル横目にコツコツ」は『プリズナーNO1.2.3』の「抜け穴掘ったんだコツコツと」を彷彿とさせる宇多丸ヴァースからのサンプリングです。
誰かを救った奇跡のフレーズ
『土産話』でも一番しびれたのは、「そんなキング(つまりRHYMESTER)とバースを分け合ってる、のあと。
「あの日救われた奇跡のフレーズ」というリリック。
これは2011年3月(いいですか、2011年の3月ですよ)に発表されたRHYMESTER『そしてまた歌い出す』の宇多丸のヴァースのなかの「かつてオレを救った奇跡のヴァース」から来てるわけですが、ここをもう少し前後含めて引用します。
「かつてオレを救った奇跡のヴァース そのバトンを次の誰かに渡す チャンスを信じて奮い立たすから」
ここだけ見たり聴いたりしてもほとんど意味はないので、フルで聴いてください。
このバトンを受け取るぞ、受け取ったぞ、っていう表明をR-指定は歌詞に残したんですよ。たぶん。
ここが一番ヘッズとキングの繋がりを感じました。潤むね。あの頃から10年経ってるし。R-指定がいま眺めてる景色を見せてほしいよ。
「こする指は世界を獲ってる」
文字通り、2019年の「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019」優勝。世界一のDJ、DJ松永。
大きな玉ねぎの下に立ってる
大きな玉ねぎの下→武道館のステージに立ってる。
つまり、武道館でライブをするようになったと。武道館の屋根にあるあれが玉ねぎみたいな形から来ています。これは元ネタと言っていいのかどうなのか、爆風スランプの1985年のアルバム『しあわせ』に収録されている『大きな玉ねぎの下で』が最初の「大きな玉ねぎ」です。出典ね。その後、シングルカットされました。懐かしい響き、シングル・カット。
で、これはちょっとしたR-指定のいたずら心なんだと思いますが、爆風スランプのボーカル・サンプラザ中野くん(元・サンプラザ中野)は、宇多丸師匠とちょっと似てると言われたりもしてます。まあ、そんな新発見みたいにはしゃぐことじゃあないですけどね。
満足したりないふたり
この先はどうなるか、という展望のなかに「ガキ使にピザ」が入ってるのがまたなんともCreepy Nutsらしいなと。
こんなに引っ張りだこで一世風靡セピアってるのに、この期に及んで退路を確保している……わけではないでしょうが、没落する未来も書き残しておくなんて。とてもクールだと思いませんか。
年末が暇になる未来もちゃんと見据えている。いいですよね。ね、ばっかり。
年明けの瞬間、そこには「午前零時」があったり。そこに向かっていくわけですね。ここまでくるとまじでテケトー。
ラストも『R.I.P(Track by DJ松永)』から「マイク一本で形勢逆転(オレの)格言 地で行くアブねぇやつ」をサンプリング。積み上げてきたもの、吸収してきたものが再度(ワンス・アゲイン)光りはじめて、非常にカタルシスに満ちた楽曲、ストーリーでした。
アルバムタイトル、『CASE』の”もしも”……
タイトルの『CASE』。けーゆーえふーゆー的に読めば「かせ(枷)」にもなります。
最初に思ったのは、自分を包むもの、という意味合いでCDケースのような「ケース」を採用したんじゃないかなと思っていたんですよ。だから強く影響を受けたアーティストのテイストが楽曲にあらわれていたのかなと。『風来』のMovingman感とか、『のびしろ』の幸せをありがとう感とか。
そういう自分を形作ったもの的なケースだったのかなと。もしくはジャケットとしてのケース? そんな想像をしていたんですけど、もう少し面白い解釈を思いつきました。
CASEっていうのは、「~のケース」「~の場合」って意味でも使いますよね。僕の場合は、みたいな。
というのはこれ、『俺に言わせりゃ』なのでは?
Check it OUTを『耳ヲ貸スベキ』と意訳したRHYMESTERへの意趣返し(もといオマージュ)なのでは?
そんな感じで〈Creepy Nuts『土産話』とRHYMESTER〉でした。
おしまい。
関連リンク
R-指定 Creepy Nuts『土産話』を語る│miyearnZZ Labo
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