前回の記事からほぼ一ヶ月経ってしまいました。「そのうち、」が一ヶ月空くなんて誰も思っていなかったでしょうね。私も思ってませんでしたし。
A型の人はもう書くことはないと思ってたでしょう。B型の人は早く書けと、O型はどうでもいいぞと、AB型の人は実はもう書いてる!? と、それぞれ思ってたでしょう。
神奈川は横浜市にひょんなことで二日ほどトリップ、帰ってきたら簿記試験を受け、B型インフルエンザなんてものにかかり寝込んでいました。いまの私はかなりILLですよ(うまくない
やっぱり語るのは野暮だ
語るほど魅力がない、って意味ではなくてね。やっぱりどうしても「ここがこーであそこがあーで」なんて話すと作品のパワーがぼやけるというか、結論、野暮じゃないですか。
しかし、前回の記事を観た人のなかには「なんだよ、『助演男優賞』のことしか触れてないのかよ。だったらタイトルに『助演男優賞』にしか触れてませんってそう書いとけ」なんて思った方が多数だったような気がする。それには私も同意見です。
だからではないが、一曲ずつ触れてみようではないか。
どっち
「どっちの料理ショー」と見せかけて、実は料理の鉄人っていう面白いボケ。
どっちにも馴染めない。どこにも居場所がない。それをドンキとビレヴァンに通う二つの人種性をピックアップし、カラッと歌うR-指定。最後の「俺らどこにも馴染めないんだってね~」を歌い上げるR-指定の笑顔まで浮かんでくるよう。
なつ「想像力たくましいっすね」
たしかにこれは(二曲目にして)二極化されていてわかりやすく秀逸なモチーフなんですが、外からみれば結局のところ二つ合わさったって小さいコミュニティーなんですよ、と言いたい。AランチBランチで悩んでどうするのと。仲良くマクドにいけ。
LDHとYNW(Yogee New Waves)
エグザイル軍団率いるLDHを聴きそうな奴ら。一昔前なら倖田來未。さらに遡り浜崎あゆみ。
対してヨギーの百番煎じ。
曽我部恵一、はっぴいえんどの系譜の音楽だが、ヨギーもどきってそんなにいるのか。あんまりこっちでは出くわさないけど東京にはいっぱいいるんだろう。最近はシティポップが雨後の筍のように出現しているらしい話をこの前大阪のライブハウスで聞いた。
そんなそれぞれの特性が、声帯模写を織り交ぜLとRにPANされて(振られて)曲は進行する。
Lで肉食系っぽくラップすればRでちゃちゃいれが、Rで草食系っぽくラップすればLでちゃちゃいれが、とデンプシーロールのごとく情報が押し寄せる。しかも最後までしっかり全ちゃちゃ入れ。ここまでLとRを有効活用した例があっただろうか。多分あっただろうな(おい
『どっち』に限ったことではないんですけどね。あれはもはやCreepy Nutsの特徴や武器の類だと思ってます。ヴァースの後ろの松永が何かとうるさい(褒めてます)やつ。
カモンッ! ヲィ! ヤッヤッヤッ! みたいなの。
『GTO』の台詞の横に小さいフォントでちょこっとある本題に関わってんだかなんだかわからんやつ。あの感じ(ほめてます)
で作品中の唯一平和が望めそうな共通項「ダンジョン観てます」。
すると当の松永があぶれるという構図。おもしろいなあ。
ちなみに私も「ダンジョン観てます」
教祖誕生
ビートたけし原作、天間 敏宏監督の『教祖誕生』って映画がありまして。ビートたけしも主演してまして、ぬるっとした岸部一徳と、ぬるっとした玉置浩二が観れますので、みんな観れ!
私もこれを機にレンタルして再見。やっぱり面白かった。
「どうしてみんな教祖になるとその気になっちゃうのかな……」なんて台詞が真理のように響く。
ミイラ取りがミイラになる、的な大まかな流れは映画『教祖誕生』をなぞってなくもないかなーとか考えたり。
キングギドラの『スタア誕生』を冒頭などでサンプリング。
元ネタは、汚い大人に担がれて”スタア”が誕生するダークな楽曲でしたが、今回担がれたスタアも少し出自の異なるもののやはり一般人。
『教祖誕生』MV評
これはMVも公開されてて、なんだか歌詞をなぞったまんまで平たくなってないかな? とやっぱり斜に構え気味に受け取ったんだけど、視えてきましたよ……ホントの敵〈ラスボス〉が。
なつ「どこにもいないからそんなの」
リアルと電脳世界、みたいなことですよね(SNSやネットを指して”リアルは別”と区切る考え方はすごい嫌いなんですが)
左が(説明の便宜上)リアルの世界で、右の黒背景がネット上の世界。
ネット上では清廉潔白の白い装束に力を誇示するような光り物が指や首にジャラジャラと。
髪も綺麗にまとまっている。
一方、リアルでは薄汚いグレーの部屋着にもっさりした髪・無精髭。整理されているとはとてもいえない部屋に缶コーヒーやインスタントラーメン、不健康そうな生活。カタカタカタカタ……。
ドラゴンボール・スラムダンク・REBORN……BLEACHやテニスの王子様っぽいのもある。相当なジャンプボーイなのか。よく見るとGTOもある(マガ
学校生活を振り返るところの文言がもうダメ臭がするよ……。ははは。
話を戻す。
教祖みたいに祀り上げられていいる有名人をこきおろし、賛同者を獲得したあとも現実世界では依然、誰からも相手にされない。
ある環境において、自分は不当に評価されている、と感じると人間はたいてい同じような行動にでます。ここの人間は自分の価値がわかってない、自分の居場所はここじゃなくて他にあるんだ、と言い聞かし心地良い方に流れます。ふん、ティッシュ配りに甘んじてる分際で(ボソ
教祖は信者を増やしまさに場外乱闘。
当事者はどうでもいい。教祖がどうか、こそが全ての信者。
ここで本曲の主役は実は信者のほうなんじゃないかな、とも思うわけです。
カモと呼ばれた信者たちこそに「お前らよー」という矛先が向いているんだと。
叩こう、燃やそう、に乗っかる信者たち。
いつだって一番手より出遅れで、かつ発言に具体性がない。あるようでない。発案もしない(私がネットで一番嫌いなコメントは『それな』である。目にすると、まじで寿命が縮むんじゃないかってくらい頭に血がのぼる)
虎の威を借る狐って言うんですか。あの人が言ってんだから正しいに決まってんでしょって思考パターン。思考停止のパターン。それに比べればこのお兄ちゃんは天狗になりいろいろと見失いつつもそれなりに考えてテキストを流してる。
すごい当たり前なことですが、教祖って人なんですよ。これみてマジモンの宗教好事家の方に本気でなにか説きに来られるとたいへん困るんですが(もうなんちゃらの証人と揉めたりとかはまじ勘弁)、信仰対象っていってもひとりの人間なわけですよ。
ところで教祖を教祖たらしめるものって何でしょう。
カリスマ性? 莫大な資本? 人知を超えた力? 宗教法人への登録?どれもちゃう。
教祖を教祖たらしめるものは信者ですよ。
ひとりで生き返りを唱えていたらそれは狂人かもしれませんが、信者が百万人いれば教祖さまになります。そして教祖より信者の方が人としてより遠くに行ってしまっている。と私は思う。
そういった観点から儲の方々をもう一度見てみましょう。
どうです、このぱっとしない服、服、服。どうみてもハイソな暮らしには結びつきそうもない中流下流っぽさ。B層っぽさ。見てる世界狭そう。自制心モロ弱そう。普段から楽しいこと発信してなさそう。
「自分は教祖とかじゃないしー、」とか安心してるお前らこそが!っていう主張なんだと思うんですよ。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のラストで似た経験をした私は耳が痛い。
あとね、最近思うんだけど”HIPHOPの曲全部が何かをdisってるわけじゃないから”という基本事項に立ち返るべき。加えて”HIPHOPの曲は絶対に何かのサンプリングが施されている”という考えも捨てるべき。
朝焼け
生の演奏でのトラックづくりというか生演奏のうえでラップするのも珍しくなくなってきているのでしょうか。KREVAはわりと早くに取り入れていましたし、コード理論を身につけたラッパー(クルー)はやっぱり強いなーと思う。キーこそがキーなのよ。
というか、これからの時代はそうじゃないと戦っていけないんじゃないかなんて、音源聴いたりフリースタイルダンジョン観たりしていると感じる。ニガマムシのときのじょう君が、やたらと音外してそれ指摘されていたけど、それがどういうことなのか、理解しないと先に進めない。
伸び悩んでいるラッパーヘッズは基本のコード理論から習得してください。
脱線しました。
泣きメロウギターリフでのポエトリー風味から始まり、ごく自然に、ごくごく自然にトラックの音階に合わせにかかる。乗っかかる。これがすごい心地良い。
フックの節々、それから「つまらないオトナには──」のあとの朝焼け(a,a,a,e)での怒涛の韻踏み散らかしと難解なフロウ。レゲエの方面なのかな。そっちはさっぱりだけど。湘南乃風っぽさを感じる私は、それイコール”レゲエっぽさ”に変換してしまっています。”ジャパレゲっぽさ”か? すまねえ、ほんとにさっぱりなんだ。
歌詞の結び
「どこかへ連れて行ってくれよ」がラストには「ここまで迎えにきてくれよ」と結ばれ、
彼の足元・決意・進む方向がばっちし固まった観がありますよね。いい。すごく良いよ!
すかっとするHIPHOPの曲は数あれど、勇気を与えてくれる曲にはなかなか出会えない。
とかいっていま出会ったんだけど。
背中を押してくれる歌。
あー今日も仕事かよだりーなーってホームで電車待ってる私の背中をぽんと押してくれる曲。
なつ「死んじゃう死んじゃう」
そんな冗談も混ぜつつ、私が今作で一番好きなのは朝焼けです。
その前までの三曲が全部締めに演出的なクッションを入れていたのに対し、この『朝焼け』と後述の『未来予想図』はそういうのがない。緩急つきの、おふざけ排除の真面目モード。
助演男優賞と朝焼けの二曲、あるいは助演男優賞と未来予想図の二曲だとこの味の深みみたいなのは出せなかったと思う。
未来予想図
ドリカムじゃないほうの。とか今更か。
ウォッチメンとはまさに監視員であり、ヒップホップウォッチメンもそこいらにいる。
Youtubeのコメント欄にもいっぱい。twitterにも、現場にもいっぱいいる。文化人口が増えるとはそういうことをはらんでいるものである。
ザック・スナイダー『ウォッチメン』のロールシャッハよろしくHIPHOPにひたすら愚直なR-指定は未来をこう見ている。いや違う。こういう未来の可能性も予測している、のほうが適切。
HIPHOPの、というよりはパーソナルな未来予想図になっていて、RHYMESTER「4’13」やMURO「HALL Of FAMER」なテイストがしますね。
未来についての言及、いま現在ではなくすこし先の未来への絶妙なスルーパスに、にわかにユーミン的リリカルセンスを私は感じました。ようやく。”真夜中”がやや虚飾を感じさせるんだけど(オイ
hiphopならではの音色
この曲ではキック(にあたる音)が二種類使われていて、これを(私が参加する)バンドの演奏にも展開できないかなーとか考えていました。音源づくりだけでなくライブのパフォーマンスとして。
バンドのキック(バスドラ)って踏むか踏まないか、つまり0か1かっていうのが主流というか常識になっている節があって、そこに光を指したいなと。ベロシティをもっと深く解釈したものを目指したい。最後に自分の話で締めるとか文書くの下手くそかよ。
みんなで騒ごう!みんなで聴こう!(Listen!)
そんなこんなで風邪ひいてるのにダラダラと毎度毎度……。
呆けるって漢字が視えてきた。
やっぱり傑作だったよ、Creepy Nutsのアルバム『助演男優賞』はさ。what’ up.
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