第2話の背面跳びの話題もさることながら、第3話での横長構図こと行き過ぎたダッチアングルには驚かされました。
次はどんな作画で楽しませてくれるんだろう……どんなワクワクを与えてくれるんだろう……、まるでピクサーの新作を待つようなそんな気持ちどっか忘れてないか?
先週先々週に放送された2話3話の画面をはじめ、原画パートを一身に背負う武遊のクレジット芸などを見るに、現場のハードな状況も想像に難くないところ。とは言ったものの、しょせん私もトーシロー、なぜこんな制作状況になるかについてはプロの方が言及しているのでそっちはふさわしい方々におまかせして……(甘え
スケジュールが厳しい(制作状況が厳しい)状況で24分ほどをどう凌ぐのか、そしてどう凌いだのかを考えたほうがわたしには有意義な気がしてます。どこまでいっても結局わたしは一視聴者ですし。
さて、「科学する」なんて大げさなことを言ったわりに私がやったのはカット数を数えたぐらいで、役に立つような大した分析でもないので特に楽しい話もないと思います。顔が崩れてるとかなんやかんやはTwitterでどうぞ。
調べるにあたり確認&知りたかったことがいくつかあって、
制作状況が厳しい場合、
- カット数は少なくなるのか
- 肩越しショット(後述)は増えるのか
- ひいてはオフ台詞の割合は増えるのか
などを数値含め何か結果にしたい。そんな企みを以前から温めてはいたのです。
やりたいやりたいと思っていた「本編のカット数を数える」に挑戦するときがきました。
カット数とショットの大まかな分類
第3話の構成:アバン→OP→AパートBパート→ED(Cパートなし)
各パートのカット数とショットを整理した結果はこんな感じでした。
アバン
アバンのカット数……5cut
背景2、肩越し2、バストショット1
Aパート
Aパートのカット数……114cut
- ロングショット……8
- ミディアムショット……26
- バストショット……25
- クローズアップ……9
- exクローズアップ……0
- 肩越しショット……20
- 背景のみ……6
- 対面横……1
- アイテム……0
- 横長構図……18
Bパートの振り分け
Bパートのカット数……89cut
- ロングショット……9
- ミディアムショット……16
- バストショット……19
- クローズアップ……17
- exクローズアップ……1
- 肩越しショット……12
- 背景のみ……6
- アイテム……4
- 横長構図……5
ショットの分類について
甘々ジャッジ炸裂です。
普段通り視聴していたときは、「カット数は落ち着いているし、計数の判断が難しいような編集(カットのつなぎ)も特になく、カメラの回り込みやリヴィールもなく、エフェクトも、モーショングラフィックスも入る余地もなく、ちょうどいまの私でも挑めるくらいのレベルの教材だ」なんて謎の自信が芽生えたのですが(失礼
実際にやってみると、ロングショットとミディアム・ロングショット、ミディアムショットとミディアムクローズアップなど、ショットのサイズ感に関して自分の中でそこまで明確な線引ができてなくて、「これは……こっちでいいか」的な甘々なジャッジが炸裂してしまいました。
肩越しショットに振ったほうがいいんじゃないか、なんてのもミディアムやバストショットに分けてしまったり。ミディアムクローズがいわゆるバストショットなんだけど的なのもあったりして……。
参考に、こんな感じで分類しましたよ、というものを。大まかな分類ルールは以下の通り。
ロングショット
全身が収まるような画角で撮られたもの。第3話は部屋ばっっっかりだったのでロングそのものが怪しいですが、部屋全体を撮ろうとしたもの、ミディアム・ロングショットもここに含めました。
これぐらいがミディアム・ロングかなぁと。
ミディアムショット
腰あたりから顔までを収めたサイズ。
バストショット
胸から顔まで収めたサイズ。
クローズアップ
顔全体で画面が占められたサイズ。
exクローズアップ
顔のパーツにまで寄ったサイズ。exはエクストリームの略。
肩越しショット
前景に配置されているキャラクターの体が画面の1/3ほど締めた場合は肩越しと見なしました。前景に入るモノが胴体などの場合も同様に。二人の会話シーンで手前のキャラクターの表情(口セルなど)を描かなくて済む利点があります。
背景のみ(エスタブリッシング・ショット)
背景(美術)だけでキャラがいないカット。
アイテム
小道具(プロップ)にカメラが寄った場合など。
横長構図
……ちょっと横になります(唯一意味のわかる横長演出がここでは?)
対面の二人(横)
上11枚の画像は『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』第3話より引用
これはミディアムロングショットの範疇なのですが、カメラがこの位置まで移動してくれたのがすごい嬉しくて、ピックアップしました。崩した足を描くのが面倒くさいからってベッドを前景にしてるあたり最高のカットですよこれ。
以上、少し自分採点が強い傾向がありますので、与太参考程度でお願いします。
肩越しショットとオフ台詞の多用 ~そして伝説へ~
少し脱線して、厳しい制作と肩越しショットやオフ台詞になんの関係性があるのだ? って話を。
(※オフ台詞とは、キャラクターの口元がフレーム内に映ってない状態で喋る台詞のことを指す)
以前、ワルブレ放送時にも「キャラクターの動きが固くて、違和感のあるオフ台詞が頻繁に起こるとスケジュールのヤバさを予感させる」と言ったように、スケジュールが壊滅的でコンテからしてヘタれている場合、オフでの台詞率が増す傾向にあるのを感じていまして。
-伝説の長尺オフ台詞が披露された第6話。ディオメディアの奇跡。思い……出した?
オフ台詞にはキャラクターの口元を描かないで済むメリットがあるわけで。急ピッチで完成に向かわないといけない場合、できるところから省エネルギーを図っていくとまず最初に削ぎ落とす対象になるんじゃないかと。「口パクの合ってなさ」には視聴者もわりかし敏感ですし。それがセオリーだと思うんです。間違っても難しいカットをポンポン要求するべきではない。
それでも何らかの画は完成させないといけないし、背景ばかりだと視聴者も違和感に気づく。
肩越しショットの魅力
その打開策として、
①キャラクターの口元を映さない制約を守りながら、
②毒にも薬にもならない(そしてクスリともしない)会話劇の進行を滞りなく行う
そんなウルトラC的カットがある。
それが肩越しショットである(ドドン
前景に後頭部を配置するだけで会話に参加しているキャラクター一人にかかるカロリーをぐっと抑えられる。デバフですよデバフ。
顔を映さない+カメラも寄っているので、胸から下を描く作業量も軽減できることが多いです。
これがもしカメラを引いて、全身(後ろ姿)をフレームに収めると等の場合、顔は映っていなくても全身や細部を描く必要が出てくるので、それもまた負担のタネとなる。
第3話でもそういったカットがありました。
「おにいちゃん、どうして黙ったままなんですか?」/『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』第3話より
それはひょっとしてギャグで言ってるのか? と思わずにはいられないメタ台詞がグッド。
口など描かなくてもキャラクターが揺れる=喋ってるって発想はもはや『ひょっこりひょうたん島』のそれと同じ。これはこれでいい味が出てます。
結果、省エネを求めると大量の肩越しショット(もといリバースショット)や類型ショットが生まれるのではないだろうか。
納期までの期間が短い→顔の表情を描くカットを減らそう→肩越しや背面のカットが増える。
こういう流れだと思います。素人なのであくまでも予想です。
いもいも第3話のオフ台詞の割合は……
肩越しショットがAパートBパート合わせて32cut。
ほかにも後ろ姿だったり歪なフレームアウトを加えると、オフ台詞と呼んで差し支えないのはだいたい40~50カットくらいでしょうか。
40~50/203cut(どんぶり計算)という数字は多いのかどうなのかわかりませんが、個人的には数える前よりも少ない印象です。もっとゴマカシが効いてた気がしていたんですが。
……うん。
数えてみたはいいものの、何が成果なのかわからないですね。辛いです。半日消費したのに。
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