【音楽】Creepy Nutsの『助演男優賞』についてのちょっと野暮な解説をする

【この記事のこと あなたの周りにも拡めてくれたら それはとってもうれしいなって】

Creepy Nuts 助演男優賞

三分後のお前の台詞は「こんなの解説じゃあねえ!!」──だ。

[著者から挨拶]

助演男優賞』の発売日が水曜で、家に届いたのが土曜日で、完全に話題の波に乗り遅れた感があります。逃した魚──あるいは逃した波は大きいと言いますか……つまり『ビッグ・ウェンズデー』ってことですね。(うまいこと言うね

アルバムを聴く前までは、『みんなちがって-』のときも記事を書いたし、今回も何か書きたいな、何か高価な、何書こうかなーと考えていたんですが、いざアルバムを聴くとどうにも筆を持つ腕が重い。なにせ『教祖誕生』と『未来予想図』にまこと耳が痛い。

なつ「効いてる効いてるwww」

youtubeのコメント欄に湧くクソ野郎や歌詞をまんま転載して小遣い稼ぎするような著作権リテラシー皆無の田吾作どもよりはまともな神経と身のわきまえを持ち合わせていると自負していただけに「毎度あり、広告収入」はけっこう心に効いた。日銭守銭奴の小市民は一体どうすりゃいいんだよ。

※途中グダってますが、読みづらいと思ったら「イントロ10秒で勝負は決まってた」の項だけでも目を通してほしいですね。ここだけは自信あるので。

MV『助演男優賞』で感じたズレ

助演男優賞のMV公開当初、MVに対して私はどちらといえば首かしげな評価で、ふたりの表現したい真意がまだ見えず手放しで賞賛することができなかった。

(動画を引っ張ってこようとしたらYOUTUBEから削除しているみたいです)
しゃあない、記憶を頼りに進めるほかない。

(凍結されていたアカウントが仮復旧しているようです)

消化不良を起こした理由としては「またこの手合いのPVか……」というのが端的なところ。あとイケメンが持て囃されているところ。

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)の面白さって、二人の人格から滲み出て来る”人をくったような”リリックやギミック、ユニークな着眼点だと思うんです。
「いやあ、相変わらずゆがんでるなあ」というウヒヒな楽しみ方を期待していたのに。だからこそプロデューサー像なる外部要素が出てくるのは悪手だったと。MV上の演出といえど。

参照リンク:こっちは最高にウヒヒできたMV作品になっていた『みんなちがって、みんないい』についての記事。

「みんなちがって、みんないい」といえば、谷川俊太郎先生と並び、小学生の国語の教科書ではたいてい載って...(以下略

歌詞全体の総意とMVの物語の総意には得も言われぬ相違がある

MVのイケメン二人とCreepy Nutsのふたりって「主演・助演」の関係ではなくて、実質的には影武者なんですよ。助演と影武者ってまったくの別もんでしょ。

そこに皮肉ネタ揶揄ネタとしては何番目のドジョウかと怒りの腕まくり「悪っぽいオトナにいいようにされちゃうウブな僕ら」的展開。この時点でテーマがぶれてる。出したいものを少し欲張ったせいかと。

オトナを滑稽に描いて”こいつらわかってないなぁ”感が出るのが毎度ながらまた卑怯なんだ。

もちろん見方を変えれば、受け止め方を凝れば「いまのセールやヒットっていうのはこういう流れで形成されているんです。どうです? つまらない?」という投げかけともとれる。

流行り乗っかって持て囃し、祭り上げては祀り上げ、信仰対象が何かやらかした咄嗟に右から左の手のひら返し。列からはみ出てはいないかとびくびくしている”自分のステータス第一主義”人間の多いこと多いこと。ジャスティンのファンで「love(はあと)」なんてコメントしたやつも【踊ってみた】で動画をUPしていた奴らも、結局のところはトレンドに乗っかることで所属の欲求承認欲求を満たしたいだけですからね。反吐が出る。

しかし某映画のヒット現象にも通ずる部分ではあるが、こういった人種の自発的な行動による情報の伝播や拡散が効率よく作用しているのはひとつの事実であるのは認めるほかない。

結局はネットを使う人間がどうか、という結論に帰結するだけなのでこの辺でやめます。

ビルを追い出されたあとのふたりの笑みが、彼らの答えを表したモノだと思いました。

どっちつかずの落とし方ですまない。

曲としての『助演男優賞』の完成された部分

そんなMVがかなりのバイアスになっていたからなのか、どうにも心の大ヒットまでこない。
サビがしっくりこないのか、と思っている。サビって言っちゃったよ。

【追記】
MVの演出上、「お・ま・た・せ」からフックに戻る気持ちいい流れがブレイクになっているのがもったいなかったなと。そこが”なんか惜しい”に繋がっていたのかなといまは感じています。はい手のひら返し。
【追記終わり】

それでも評価を繋ぎとめていたのは、やっぱりR-指定のワード選びのセンスが大きい。

ハイコンテクストなワード

「田岡が見逃した不安要素」「ブラックレイン 松田優作」このあたりが特にいい。松田優作とCreepy Nutsって、けつの「あっう」の音しか踏んでないのにこの説得力は流石。

この筆頭二つは、あのブログ(※)の解説としてうまく機能していたハイコンテクストな用語というもの。つまり、知ってる人ならすぐにピンとくるけど知らない人はなんのことかわからないワードのことを指す。「田岡が見逃した不安要素」とは、ジャンプ史上最高峰ともいえる”ワンサゲンを成し遂げた男”三井寿 のこと。静かにしろい。

【2017/2/9追記】
ありがたいコメントのご指摘どおり、「田岡が見逃した不安要素」は三井ではなくてめがね君こと木暮公延のことを差してました。こんな初歩的取り違い。わかった気になってました、ほんとすみません。
【追記おわり】

【2017/3/2追記】
juswannaやDABOがローコンテクストなのかどうか問題(問題でもない)をコメントにていただいたりしまして、私も一年生なのでヒップホップIQも低いですし、そっち方面を気持ちよく挙げられなくて恐縮なのですが、記憶の引き金321からの流れがMUROの『CHAIN REACTION』のGORE-TEXを想起させんでもない。ってのはどうですか。あ、無理してもうた。
【追記終わり】

あのブログこと
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) の『 助演男優賞』のコレじゃない感について

by カエレバ

共有による安心感、という心理概念

必死にやりこんだゲームや読み漁った漫画があるとする。そのときはもちろん楽しいのだが、入社などで環境が変わるとその経験はまったく役に立たず、それを知らないほかの人間は自分よりもしっかり社会生活に順応できている状況を前にすると、「漫画ばっかり読んで、自分はなんて無駄な時間を……」と悲観することになる。しかしそこにかわいい同僚の女の子が現れ「みんな堅い話ばっかりでつまらない。あーあ、誰か松本大治先生の『Desperado』について話せる人、いないかなー」とくれば、漫画を読んでいた時間や経験は無駄ではなかったと肯定感が得られる。

なつ「20年前の少年マガジンとはコア女っすね」

これが共有による安心感。自分が好意を抱いている相手だと尚更効果がある。

加えて、ハイコンテクストをクリアした人間はその情報の認知度(あるいはマイナー度)もおおよそながら推測できるため、ネタがわからない人間像を想定しやすく、”わかっている自分”に優越感を持てる。こういったナードマインドを刺激する構造になっている。R-指定のリリックに限ったことじゃないですが。

HIPHOPにさして明るくない私が、RHYMESTERのオタクな佐々木こと宇多丸師匠にとくに惹かれる理由もこの辺にある。映画の話も漫画の話もすべて教養の範疇だと思っているので、R-指定にはただただ「勤勉だなあ」と感心してしまう。

単語のみでの連想

上の「ブラックレイン 松田優作」もそうで、それに続く「ロックフェスでのCreepy Nuts」にもいえるんですが、「~が、どう」とか述語が欠けまくりで文脈としては完全に不完全なんですよ。そういうのが歌詞の端々にある。「ダークナイトで言えばジョーカー」というガイドがあるから「ブラックレイン (で言えば)松田優作」という解釈はたやすくできるんですがこれはどういう脳の作用なんでしょうか。不思議だ。

で、この感覚って以前何処かで……、と記憶を遡っていたらRHYMESTERの『BIGMOUTH1&2』でのDさんのライミング論法がそれに近いのかなと。(Mummy-Dさんドラマ出演おめでとうございます。あんまりフレームインの機会がなくてちょっぴり寂しいです)

しかしこのDさんの人名逆さま名人芸は素晴らしい。

イントロ10秒で勝負は決まってた

ほんと褒めてるのかそうじゃないのか、わからなくなってきた。教祖誕生のせいだよ。

助演男優賞のイントロでピアノとコーラスで「Ah~、Ah~」ってのがあるじゃないですか。

あれってAbbaの『Dancing Queen(ダンシング・クイーン)』をサンプリングしてるとみてまず間違いないと思います。え、Abba知らない? そこはおさえとこうよ。

ダンシング・クイーンがどういう歌詞だったかとすごくかんたんに要約すると

「あなたは若くてかわいい17歳、あなたの前にチャンスが訪れて一生に一度の経験をするわ。さあ、ダンシング・クイーン(主役)の座を射止めるのよ」

というもの。前向きで背中を教えてくれる曲です。

それがですよ、ノイズが混じり「プツン」という音とともにピアノが消える。

つまり「!夢です! ところがどっこい現実じゃありません!こんなの全部!」ってことです。こんなものフィクションですよーと。

主役なんてそう皆がなれるようなものじゃないの。なれてもそれはとってもとっても小さな舞台ってことでしょうな。自分がどれだけ矮小な存在か考える、ってテーマなら『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズの一巻か『トレインスポッティング』あたりを参照のこと。

タイラー・ダーデンだって言ってましたよ。「オレたちは映画スターやロックスターになれると信じ込まされて育ってきた」って。

なつ「誰?」

ファイトクラブ』も観てないとは……

by カエレバ

名作なのでぜひ観てね。

小ネタのオチ

ABBAネタとしてもうひとつ。『マンマ・ミーア!』って映画があるんですよ。

マンマ・ミーア マンマ・ミーア

メリル・ストリープが主演のミュージカル映画なんですが、ABBAの楽曲がいっぱい使われていて。The・Whoの『さらば青春の光』みたいなもんといえばいいのか。ちょっと違うか。(ぜんぜん違う

ともかく『マンマ・ミーア!』のなかの父親候補役でピアーズ・ブロスナンが出て来る。ニンテンドー64の『ゴールデンアイ007』のボンド役の人といえば20歳くらいまでならわかるか。

そのピアーズ・ブロスナンが本作にてラジー賞の最低助演男優賞を受賞している。ラジー賞を知らない人用のざっくりした説明だと、2008年に映画界で一番スベったやつと捉えても問題はない。……と、そんな背景もあったりして。

ピアーズ・ブロスナンもといゴールデンアイで思い出したけど、トラックのサーフっぽいリフものもゴールデンアイのテーマっぽく聴こえてくる不思議。

リズムも近いし、このうえでラップすると気持ちいい。今度知人に提供しよう。

だから「お・ま・た・せ」のところで銃声が鳴ってたんだな。なるほどね。

そんな深読みもまた楽しい……ってこんな記事も教祖が引き連れた信者に蹂躙されちゃうのかな。だってそれがこの世のジャスティスだもんね。

といったところで小話はおしまい。

トレーラーでピンとこなかった方、不安になるなかれ。

Creepy NutsはちゃんとCreepy Nutsしてましたよ。

by カエレバ

やっぱり歌詞カードがないと。

p.s. 曲の最後にも「プツン」があります。これも結局はフィクションだけどね、ってことなんでしょう。いや、まさか……。

参照リンク:続きを作成中です。野暮な話を続けるなんて。

野暮な話の続きをするなんて、なんたる野暮。

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)公式サイト
http://creepynuts.com/

ありがたいコメントご意見ご感想

  1. jk より:

    はじめまして、拝読させていただきました。
    自分は「旬なネタいっぱいのMVだな~」くらいの感想で
    裏方すぎるっていう部分に気づけてなかったです…
    確かに助演男優ではなくゴーストライター的なポジションですね。

    1点、確認させて頂きたいのですが文章中に出てくる”あのブログ”は
    折田(兄)さんが書かれたものでしょうか?(恐らく違うとは思いますが…)

    なぜ確認したかったかというと、私は”あのブログ”に書かれていた内容に
    ほぼ納得しておりません。

    MVについて批判をしているように見せかけ
    途中からトラックの良し悪しもMVの評価に含めだしたにも関わらず
    リリックにまったく触れないというやり方を不自然だと感じたからです。

    折田(兄)さんも書かれている通り、
    随所に分かる人には分かる表現が仕込まれているこのリリックを聴いて
    「ハイコンテクストなものが消え失せた」とは決して言えないと私は思います。
    “あのブログ”を書いた方が理解できていないだけなのでは?
    という気持ちでいっぱいでした。

    個人的には”今か今かと待ちわびた”juswannaのBlackBox、
    “見くびるな見下すな”DABOのレクサスグッチ(恐らく)の辺りですね。
    もし”あのブログ”を書いた方がjuswannaは誰もが知っているミュージシャンで
    ローコンテクストな引用だというのであれば何も言えませんが…。

    特に何の不満も持たず助演男優賞を楽しく聴いていたので
    “あのブログ”に対して非常に憤ってしまい
    偶然通りかかったブログにコメントを残してしまいました。

    長文、大変失礼致しました。

    • jkさん、遅くなりました。スパムのフォルダに流れ着いており発見が遅れました。
      すみません。真摯な憤りありがとうございます。
      まず”あのブログ”(我ながらめんどくさい表現だなあ)についてですが、作成者は私ではありません。他にアルバムや助演男優賞について触れている方がいらっしゃるか検索中、検索上位に出ていたので目にした方も多いかと思い引用・リンクさせていただきました。

      MVをマイナスに誘導する手前、トラックまで一緒くたに「こだわりが感じられない」と抽象的なワードを使いここだけ少ない言及でもってのアプローチはやや横暴ですね。「こだわり」なんてものはそれこそ文字数を費やして書いた人と見た人の共通の認識に変えていかないといけないものですから。

      私はあの記事に対して、物語のつまらなさを”勧善懲悪的”と捉えていた部分と、トラックがストーリを語るための道具のような扱い、のふたつが気になってました。言わんとすることが読み取れない。(「お・ま・た・せ」のカットのあたりでしょうか?)
      影武者だなんだ当記事を書いたあとのタイミングでCreepy Nutsのインタビュー記事を読んだのですが、あのイケメン二人は”二代目Creepy Nuts”ということらしいのです。
      伝わんねぇよ(ボソ

      といったことを踏まえつつ。

      あの記事は作成者様がMVについて感じたものを綴っていたので、「ハイコンテクストが消え失せた」はあくまでもMVのなかに映しているものMVのなかで流れているお話にかかっているのです。
      それはオリゴン一位の権威主義であったり、外見の良さこそ正義だったり、テコ入れのアイデアが一辺倒なプロデューサーだったり流行りに乗っかる女の子だったり手のひら返し等のことを指し、と同時に相対的には批判するスタンス、つまり物語のオチも(もはや)ローコンテクストの部類だと。二番煎じとローコンテクストは必ずしも一致しないんですが、とにかくそういう主張なんだと思いました。

      juswannaをローコンテクストというのはなかなか攻めてますね……。
      結局はリスナーをどう捉えるか、ということかと。「分かる人にはわかる」と「知ってて当然」の境界線は実は非常に曖昧なんだと思います。
      Lick-Gが”ビーツに弾く韻”引用をしたときの会場の沸きの少なさも、「お前らHIPHOP好きなんやったらいまの沸くやろ。いや、ワンバース目から沸くやろ」という思いも「HIPHOP一年生ならまあしょうがないか」の思いもありました。私自身二年生に上がれてるか不明ですが。
      前者のような高圧的な接し方が行き着くのは草食系ヒエラルキーであり、語り合うだけ詮無しかななんて思ったり。
      楽しいんですけどね。ちょっと脱線しました。

      改行がヘタですみません。

  2. ばんこ より:

    「田岡が見逃した不安要素」は三井ではなくて木暮の事ではないですか?

    • ばんこさん、ご指摘ありがとうございます。
      おっしゃる通り「田岡が見逃した不安要素」は小暮のことですね。スリーポイントに引っ張られて三井のことと思ってました。昔の記憶のまま粗略で喋ってはいけませんね……。
      修正します。