アニメに出てくる「見上げPOV」について

恋は雨上がりのように あきら 演出・分析
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冬アニメを観ていて「POV(Point Of View:視点)の演出について書きたくなった。もちろんやらしくない方のPOVです。

クラスのみんなが一斉に動いたからどうだとか、TVシリーズ的なカロリーを考慮とか、「粋だね」で片付けられる視えない超過労働とかの話は今回もしない

POVショットとは、登場するキャラクターの「視界」を擬似的に再現して臨場感などを出す手法です。呼び名は「見た目ショット」とか「主観ショット」とかいろいろとあります。

アクションゲームの話題などで聞き馴染みのある「FPS(First Person shooter)」「ファーストパーソン」の部分は「第一人称(-視点)を意味しているのですが、「本人の目線(本人が見ている世界)という枠組みはPOVとほぼ同じと考えていい。

(※視点・視界・目線……と言葉のチョイスがごっちゃになってますが、「その人物が見ているもの」ってくらいのアバウトな認識でお願いします)

亜人ちゃん一話4
鉄男に迫るひかりの目を通したPOVショット(『亜人ちゃんは語りたい』第1話より)

改めて見返すと八の字振りがややオーバーな気も。

お気づきの方もいると思いますが、POVショットで撮っている間は基本的にそのキャラクターの姿はカメラに映りません(※鏡や水面など、反射作用のあるものに向かい合ったりする場合を除く)。普段の生活で自分の顔が見えないのと同じです。

下を向いたアングルで膝や指先が映ったり、前に伸ばした手がフレーム(視界)に入り込んだりする例はあります。これはまた名称が異なります。なので、あくまで「基本的には」としてます

POVの面白いところは、(彼女)が見ている景色・情報量を観客がそのままそっくり共有できる点です。キャラクターに憑依している、といっても過言ではない。

もうひとつ、ちょっぴり変則的なアプローチとして「無生物に命を宿すことができる」というのもあるけれど、それはヴォイヤー系に分類したほうが適しているかもしれない。じゃあわざわざ書くなよって話である。

では始めます。

見上げPOVとは何か

POVショットについてマスターしてもらったところで少し話を発展させるぞ。

キャラクターの見ている視界=画面のフレームになるのがPOVであるならば、キャラクターが仰向けに寝そべった場合、POVショットではどういった画面構成になるのか考えよう。

『恋は雨上がりのように』より
あきらの見ている景色を想像するのだ(『恋は雨上がりのように』第2話より)

状況によりけりだが、部屋の天井が、空が、木々が、星が、宇宙が視えるはずである。

この限定的なアングルのPOVを「見上げPOV」と勝手に提唱することにする。

仰向けで上を見る動作を「見上げる」と呼べるかは一考の余地ありですが、あまり深く考えないのが吉。グーグルで検索かけても近しいのがヒットしなかったので、ロバート・スコットのごとく一番乗り! いえーい

「寝そべりPOV」とかでも別にいいんですけど、今日話したいのはこのカメラワークが冬アニメで2つ出てきたぞと。

重要なのはそこである。

『スロウスタート』第10話「サメのいとこ」

志温ちゃんさんと花名が将来のビジョンについて布団に入って語らうシーン。


横向きの志温→POV→仰向けになっている志温のカット順(『スロウスタート』第10話より)

この少し前から花名はうつ伏せというのが引きの画で描かれていました。

横を向いていた志温が話し始めると、POVショットが入り、そのタイミングで布団がこすれる「ガサガサっ」としたSEが入る。体勢を仰向けに変えたことの音的フォローアプローチですね。

現状に対する不安から顔を隠しうつむきがちの花名と、現状と将来を見据え力強く前を見る志温ちゃんとの対比がグレートだ。

じゃあ次。

『三ツ星カラーズ』第10話「雪すぎる」

雪ですべって公園で寝転がるカラーズ。


指をさすモーション→POV→横からのアングルの順(『三ツ星カラーズ』第10話より)

琴葉(青い子)視点のPOV。ちょっと琴葉の右手が写り込んでますが、まあ気にしない。これが特殊パターン。

ふたつ並べた『スロウスタート』と『三ツ星カラーズ』の見上げPOV、大きく異なる部分があるんですが何か気づきませんか?

そうです!(←ブログ書き方指南のうっとおしいやつ

POVに入る前のカットに違いがあるのです。

POVショットへの誘い〈いざない〉

ふたつの流れをテキストで確認。

スロウスタートの場合

横向きで話す志温をやや斜めの俯瞰→見上げPOV→仰向けになった志温を正面からのアップ

【註釈】

横を向き目を閉じていた志温の「視界」には、観客が「見たくなる」ものがない。次のカットでPOVになり、観客は「お、これは志温の目を通したものだ」となるか、あるいは3カット目の切り返しになって「あ、いまのはPOVショットだったのか」となるのである。

三ツ星カラーズの場合

「こんなに雪はどこにあったのか」という問いに答える形で上を指差す琴葉見上げPOV→並ぶ三人を横アングルから琴葉が空を指差した瞬間、指が示す方向(フレームの外)に何があるのか、観客は「見たくなる」のだ。

「カメラさん、上を映して!」と思わせた欲求と期待に応えるようにカメラはその解答を──「曇った空」を撮る。

視線提示の有無

この視線誘導(というか”視線で誘導”?)がPOVショットを放り込むうえでの一般的な作法、順当なセオリーなのだと私は信じている。

POVショットの前には、「視線をおくる様子」を強調/提示し、観客に「その先」を意識させたほうが効果は大きい。キタノ映画でもデ・パルマでもそうだし。

つまり、「キャラクターがなにかを見てから、観客もそれを見る」という流れをつくるとシームレスである、そんな主張。

例えば『化物語』の第12話なんかでも、キャラクターのあとに観客、の流れがある。


BLACKインで目を開く→驚きの表情とともにカメラが引く→POV(『化物語』第12話より)

阿良々木君の眼球アップに驚いた声をかぶせる画に始まり、後ろに引いていったところでカメラが切り替わる。すると満開の星空がどーんと広がる

眼球アップ&見開いた目により、観客は「阿良々木君が何かを見て驚いている」状況を理解し、自分も早くそれが見たくなる。この御膳立てがあるからこそ阿良々木君と一緒に満天の星空にカタルシスを感じることができる。という寸法なのだ。

じゃあ最後に、天井といえばなアレ。

その視点、見上げたもんだ

見上げPOVの原典〈オリジナル〉はてんで知らないけれど、いちばん有名なのはやっぱりコレじゃないかなんて。


『新世紀エヴァンゲリオン』第2話より

新世紀エヴァンゲリオン』第弐話「見知らぬ、天井」です。

おしまい。

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コメント,ご意見など (中傷発言はNO)

  1. 何て言うか最後の部分を書きたいだけで他のコンテンツを否定していく感じが宗教観あっていいと思います

    • 書いているうちにエヴァの知らない天井まで思い至ったので、最後に付け足すように書きました。論旨がずれていってるのは申し訳ないです
      いろんなPOVがあって面白いねって話なので、どれが不出来だってとこまではやりたくないです。ありがとうございます。

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