『さよならの朝に約束の花をかざろう』は愛と肯定の人生の物語である

さよ朝 アニメ感想文
本ブログは独自に商品やサービスを紹介しております。また記事内には広告が含まれます

演出的なあれこれ(蛇足)

レイリアを救いに行くシーンでマキアと向き合うシーン、陰に入っての境界線演出は見飽きてきた感がある。陰の部分=ダークサイドって類の境界線。もう自分は清らかな人間ではない、日の下は歩けない罪を犯したのだ、的な。マキアを逃したあとに見上げた空は建物に阻まれて僅かしか視えず、環境も、自分の心も、すべてがイオルフのころとは変わってしまっているのだ的な。「智恵子は東京に~」だ。

(演出について話すと『的な』と抽象になるのはしょうがない)

マッチカットと時間の経過

エリアルの成長を基本軸に、年単位の時間経過が数回入る。この大きめの移り変わりを繋いでいたのがふたつのマッチカットでした。

(※マッチカットは画面内に共通した動きや物体をリンクさせてカットAからカットBに移行させる繋ぎ方です。詳細は割愛)

例。

ブレイキング・バッド マッチカット
『ブレイキング・バッド シーズン4 第1話』より

血のついた床を掃除しているモップからケチャップを混ぜるポテトにつなぐ。

──。

まあこういうのです。同人物でもいいし、似た形態の別のものでもいいし、なんなら音でもいいです。

農村パート中オノラのあとくらいだったかな?)に、飛ぶ鳥で繋いだマッチカットがひとつ。イゾルが「レナトがまた赤目病にかかって死にました」みたいなことを話すところ。ここで1-2年くらい跳んだのかな。詳細は不明。

もうひとつが、クリムと別れふたりで暮らすようになって、仕事がなかなか見つからなくて雨が降った晩。
「大きくならなくちゃ、母さん守れない」(号泣メーン!)って抱き合うところの街頭→炭鉱の溶岩(?)のマッチカットです。ここは8年くらいいってそう。カットが切り替わるともう炭鉱で働くようになってました。

もう一個大きく跳んだらしいのは、エリアルが兵士になってからの期間。経験を積んでたりディタと出会ってたりするあたりなんですが、ここの繋ぎで何か挟んであったかはわからなかった。

 

そういえば『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』でも似たようなのがあった。街灯に集まる蛾と鳥を繋げてるんだと思う。ポジションぜんぜん違うんですが。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』より

この繋ぎは、夜の時軸ではまだ めんまが幽霊として存在しているので超平和バスターズの6人と数を揃えて蛾も6匹。次の夕方のカットでは現在軸に戻り、すでにめんまはいなくなってて超平和バスターズは残された五人、だから飛んでる鳥も5羽。

話がそれた。

マッチカットの性質

そもそも蒸し返すようなことを言うと、マッチカットって本来遠いカット(繋がりにくいカット)をなめらかにつなごうってタイプの繋ぎなので、年代が跳んだりすることを提示するなら意識的に隙間を見せていかなきゃダメだったんじゃないかと思う。隙間じゃなくても経過を示す指針を添えるとか。小さい子の成長は時間経過としてわかりやすいけども、18歳から20歳の変化(年齢はテキトウです)は判断しにくいぞと。

だから「おれは父親にヌルヌル(甘噛み)ってエリアルが言い出したときはちょっと戸惑いが。知らん間に知らん期間の経過があったのか……なんて。考えてみれば、いきなりあんな戦地で動けっこないしねえ。ラングも師団長か何かに昇進してた気がするなそういえば。

さては……ワックスしたな。

メタファ

父親で思い出しましたけど、日笠陽子の貴重な出産シーンと重なる兵士の血が出るあれは完全にギャグですよ。二回目なのに「っふふ……」って顔を隠す羽目に。

鋭い棒状のもの(槍)が迫ってきて、血が出て、次のカットで赤ちゃんのオギャーって……。完全にシダックスのメタファーやないか。ここはちょっと下品かもしれない。面白かったからいいけど。

同シーン、エリアルが血でぬるっと足元滑らすの良かった。

その他

1.レイリアがメドメルの横を駆けて跳躍する足場もろもろがキラッとしたCGだったんですけど、あそこは手描きが欲しかったなあ。

2.あとはどことは言わないですが「あー『コンタクト』だ」的なカットもありました。マナーが悪い。

3.別の劇場で観て確信に変わってきたのは、BGM・SEと台詞の音のバランスちょっとおかしいんじゃねえかって。一回目は最後列から二番目の列だったんで音が全部前から来る。これじゃただのでかいテレビだわ」って後悔したんですが、二回目に中腹で観たときも大した差はなかったので、やっぱりバランスが……と思う次第。どうなんでしょう、台詞がBGMにかぶって聞こえにくかったとか思いませんでしたか?

4.「また引っ越ししなくちゃになるんだけど」って台詞ね。岡田麿里監督に限らず近年すごく鼻につく、助詞とか断定の使い方。どうして「~しないといけない」の一言が言わせられないのか。「しなくちゃになる」ってなに?  これはけっこう真面目に怒ってる。「~かもだけど」とか最たる。耳が腐る。今後誰かが同じ過ちをしない為にも、ここは徹底的に添削するのが正解。

5.現場の人間の汚さというか、炭鉱の人間はほんとクソだなって思いましたね。若いの煽って酒をノリで無理強いするわ、食器を箸やスプーンで叩いて楽器代わりにするわ、一体どんな育ちをしたらああなるんなんだか。これだから3K底辺とか言って馬鹿にされるんですよ……。

──という作者の日頃の風刺したい願望と本音が反映されたような見事なシーンでしたね!(責任なすりつけ)

【参照リンク】

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』公式サイト

映画『永遠の僕たち』予告編
肯定するって部分を書いてたときに頭の中にあったのがこの映画です。機会があれば観てください。

コメント,ご意見など (中傷発言はNO)

タイトルとURLをコピーしました