【配信情報追記】
早いもので各配信サービスにも『プラットフォーム』が降りてきました(うまくない)。
- 『プラットフォーム』視聴ページ│U-NEXT
- 『プラットフォーム』視聴ページ│Netflix
日本での公開は2021年ですが製作自体は2019年、スペイン産の映画です。
梅田ブルク7にて『プラットフォーム』鑑賞。今年初めての映画館での劇場作品鑑賞です。どうしてかは言わなくてもわかるでしょう。語るに落ちる。どんどん落ちていくプラットフォームの穴。
そういえば森博嗣の著作のなかに『堕ちていく僕たち』という作品がありましたな。未読なのでこれ以上は広げない。
『プラットフォーム』はなにかを抽象化された作品だったのだと思います。メッセージがあるような、ないような。
「生まれた環境は選べないのだ」と残酷な現実を叩きつけられたあとには、環境は変えていけるのだと果敢にシステムに挑む。現実世界(物語のなかの言葉では「外の世界」)をそのまま凝縮したようなプラットフォームと人間の暗部に主人公ゴレンは焦躁/消耗しながらも耐えしのぎ、後半では、地獄の釜の蓋が開くとはこのことかというようなハードモードが眼前に広がっていく──。
やはり予告編90秒で私を自宅から映画館に連れてこさせただけあって、設定に惹きつけるものがありました。
ここで予告をどうぞ。
この手の作品はワンシチュエーションスリラものとか呼ばれたりします。
近いところで『CUBE』を思い出した方も多いでしょう。部屋の中央の穴から下の階層を覗き込むシーンをみたとき、私は『パラドクス』の無限に続く非常階段がちょっとだけよぎりました。
まあ過去の映画録はどうでもよく、こういう作品の楽しみ方のひとつは、放り込まれたシステムへの疑問が解けていく過程や、謎を攻略していく起死回生のアイデアだったりするのです。
映画『プラットフォーム』のハードモード感がいい
まずは”プラットフォーム”のシステム説明パート。
魅力的な設定だけに冒頭のチュートリアルは引き込まれるものがあります。といっても、予告編で言っていたことの復習でもありますが(食べ物は上の階層の食べ残ししか与えられない、一ヶ月ごとに階を移動するなど)。
「なるほど、けっこうハードなルールなんだなあ」と自分ならどうやって生き残るかの策を頭の中で模索しながら観ていると、ついに物語が動きだす予感が。
「明日、階層が移動する。神に祈ろう」
『プラットフォーム』の本番はまさしくここからでした。
ジェットコースタ型とまではいかないながらも、なかなかの絶望感が待っています。
ギアが入るタイミングは2回ほどありましたね。
ここから物語が動き出すぞ(面白くなるぞ)といったギアが入る瞬間。たぶん、25分と70分くらいのところじゃないですかね。スクリプトDr.的な分析だと。ついマスクの下で口角が上がってしまいました。なぜマスクをしていたのかは語らない。
そのタイミングで台詞が少ないのも良かった。表情で物語のベクトルを押していくのがいい。
広がる風呂敷
ある程度の心構えといってはなんですが、明確な解決とかエンディングはないだろうと予測はしていました。邪にいえば「どうせ風呂敷を畳めないんだろ」といった具合。
アイデアぶち上げ一本で走り続ける映画でもないですけど、難解なオープンエンドも視野に入れていたわけです。
それでも、「あそこ気になってるんだけど、製作者が糸口垂らしてるのか?」「このシステム(ルール)を利用したら、こういうことできるんじゃないの?」といった疑問が並行して湧いてくる。良い。作品を楽しんでいる感じがする。
最後にたどり着く場所
難解な結論も解消されない疑問もあったわけですが(料理を作ってた人たちとあの管理者っぽいおじさんは誰? とかそんなレベルではなく)、どちらも自分が納得する合理的な理由と解釈を探せばいいだけです。
プラットフォームとはつまりなんだったのか。あの施設はどこにあるのか。どんな理由で管理しているのか。考えたければ考えればいい。自分が納得できればそれが正解になるのです。
草薙素子 曰く、
「世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら、耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ」
だそうです。まあ、サリンジャーですね。『堕ちていく僕たち』にかろうじて繋げることに成功した……のか?
普段は劇場での鑑賞には飲まず食わずで臨む私ですが、「本作の楽しみは、電流鉄骨渡りに出てきた金持ち連中よろしくポップコーンを食べながら観るのが勝者の振る舞いではないか?」と思い、メロンソーダのレギュラだけ買って着席しました。ビバ小市民。
おしまい。
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