『プライベート・ライアン』『トラフィック』とか、Jカットあれこれ

プライベート・ライアン 映画の感想文
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Jカットとは編集技法のひとつです。映画でもアニメでも、ちょくちょくお目にかかります。

 

仕組みと由来に関しては、編集の過程でフィルムのポジションがJの字のように見えるため「Jカット」と名付けられています(と、adobeのページに書いてます)。逆の演出効果(音が次の絵まで残る)を持つ「Lカット」の由来も同様に、編集あとがLの字になるためそう呼ばれています。

※フィルムの一部を省略して独特のリズムを生み出す「ジャンプカット」とは別物

演出効果は、カット繋ぎをスムーズに見せたり、本来は繋がっていないものを繋がったように見せて架空の驚きを与えたり、いくつかの狙いがあります。

後日書き足したこっちの記事のほうが理解が早いかと思います。

Jカットの面白みについて考える(『天気の子』と『ジェネラル・ルージュの凱旋』)
動画編集でもとっても大事かつ有用な効果を得られる演出「Jカット」について。『天気の子』と『ジェネラル・ルージュの凱旋』で使われたインパクトのある繋ぎ方を考える
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映画で見られるJカットの数々

実際にJカットをひとつ見てみましょう。

映画『プライベート・ライアン』では、現代のアメリカから戦時中のノルマンディーへとシーンが切り替わるところのカット繋ぎにJカットが使われています。

※パラマウント・ピクチャーズ様から申し立てを受けました。再生できない場合があります。

映画『プライベート・ライアン』のJカット

プライベート・ライアン プライベート・ライアン
『プライベート・ライアン』より

退役した軍人の目元までぐぐーっと近づいて、さざ波の音が聞こえてきたかと思うと……

プライベート・ライアン
『プライベート・ライアン』より

色味の落ちた海岸線のカットにすぱっと切り替わります。

当時を想起する老人の記憶を覗くようにして、観客は当時のノルマンディー、1944年6月6日のまさに「Dデイ」までスムーズに遡る効果を得られるわけです。

これは正当な、順路的な繋ぎ方の代表です。回想への導入、夢からの覚醒、場所の移動など、つながりに自然さを求めた手段。

映画『12モンキーズ』のJカット

夢からの覚醒の例として、『12モンキーズ』の冒頭のシーンをどうぞ。

字幕がないのでわかりにくいかもしれない。補足の吹替版もどうぞ。吹替編集があまり上手くいってないぶん、気持ちよさがない……。

実はここにはもうひとつテクニカルな仕掛けがあるのですが、それは本編を観てチェックしてください。若かりし頃のデビッド・モースさんが拝めます。テリー・ギリアム作品としてはすごく観やすい作品だと思うので、要チェック。精神病院内での、モニタに映るカートゥーンのSEに合わせたブラピの演技も要チェックです。

Jカットの繋がりの妙

観客を裏切り翻弄するような意図を持って繋げたJカットの用法、というのもあります。

代表的なのがダスティン・ホフマン主演:マイク・ニコルズ監督の『卒業』のワンシーン。

(※このシーンはマッチカットの例としても有名ですが、今回は割愛)

ベッドインして「さあ、いたすぞ」というところで、ベンの父親の声がする。観客は「なんでここに父さんが!?」とドキッとしますね。修羅場到来だと。

念のために和訳を、

父親「ベン、何してるんだ?」

ベン「浮かんでるだけさ、プールで」

父親「なぜ?」

ベン「気持ちいいんだよ」

内容にかかってくるJカット

プールでだらけているベンに説教を始める父親の台詞──「ベン、何をしてるんだ」──が前のカットまで先行しています(つまりJカットのかたちになっている)。

その一言目の「何してるんだ?」という台詞が、前のカットでいちゃついてるベンにも内容的にかかっているように感じるために、さきほどのドキッとする架空のシチュエーションを想起させ、観客に驚きを与える。こんな仕組みです。

まあ、いちいち文字にしなくても観てれば感覚でわかるでしょこんなこたぁ、とは思いますが。

映画『トラフィック』、シーンの変わらないJカットを発見

一般的に、Jカットは別のシーンに移る際のつなぎ目のカットをシームレスに繋げるために用いられます。数が多いのは圧倒的にこっち。

そんななか、シーンは同じ(舞台は同じ)だけどJカットを使ったパターンも存在します。

Jカットはカットの繋ぎを美しくコーディングする演出なので、カットが切れているのが前提です。繋ぐためには切れていないといけない。

同じシーンで、それぞれカットが切れている。そしてそれを繋ぐ。

「それはすなわちジャンプカットではないか」と、察しのいい読者は気づいたでしょう。しかし、ジャンプカットは絵が飛び飛びにはなりますが、音声が前のカットにずれ込むといったことはありません。

映像に逃げる癖が最近ついてますが、実物を見てもらいましょう。ソダーバーグ『トラフィック』のワンシーン。動画開始1秒の箇所ですから見逃さないように。

はい。紛れもなくJカットでございました。

『トラフィック』はジャンプカットも多いのですが、マイケル・ダグラスのこのシーンでは、「その場でJカット(ジャンプカット+Jカット)をやってのけています。※私が勝手に命名。一回だけの跳躍をジャンプカットと呼んでいいのかは議論の余地あり。

かっこいいですね。

似たニュアンスの画面としては、「ボイスオーバー+ジャンプカット」あたりと混同する人がいそうですが、Jカットの基本「後ろにあったはずの音声を前に持ってきている」という点に目を向けると明確に違うと判断できるはずです。

以上、Jカットについての最近の発見でした。

おしまい。

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