『ネト充のススメ』で改めて考える「スクリーンディレクション」について

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ネト充のススメ ディレクション

(文量が長くなったのとテーマがブレたので記事を分割しました。最後のまとめ追記もしました)

ネト充のススメ』が相変わらず面白い。海外では「MMO Junkie」なんて呼ばれてますがしかし、落ち着きのある上田麗奈の演技はいいなあ。

前期からの2クール目突入中の作品も含めて、今期は豊作なシーズンなんじゃないだろうか。どうですか、みなさま。期待していたより何倍も面白かったなガハハって感じですか?

ぜひとも視聴をオススメしたい『ネト充のススメ』は、お互いの認識がテレコ(死後)になった性別が作品のキモの部分。だから「男である、女である」を画面上に押し上げる意味も込めて、林の髪の色は男らしいカラーの青系であり、リリィの髪色は女らしい赤系なのである。それはタイトルのカラー配分にも表れている。いまさらのドヤ説明お許しを。

『ネト充のススメ』
『ネト充のススメ』OPより

来年1月から放送予定の『ダーリン・イン・ザ・フランキス』も男女パートナーの関係性が物語のキー要素になりそうで、こちらは男女の青と赤だけじゃなくて、色収差の表現もついている。「光」「速度」とかがシャレオツに繋がってくるかも、なんて想像中。


『ダーリン・イン・ザ・フランキス』公式サイトより

これも楽しみですねー。


振り返ること数ヶ月、8月ごろだったか、求人雑誌『an』との企画で本作のアフレコ要員を募集する求人がありましたが、応募だけでもしておくんだったなーといまさらになって後悔してます。採用された方々は最終話に少し登場するらしく、そのあたりも先の楽しみにしつつ観てます。羨ましいなー、いいなあー。

【アフレコ超バイトのレポート記事はこちら】
https://weban.jp/contents/c/cho_baito/comico9_pc/


本題。

以前、『プリンセス・プリンシパル』の振り返り記事内「江畑諒真の絵コンテ回はディレクションが曖昧になっているような感じ。俯瞰した画が欲しい」的な、なんとも不敬なことを言ってました。へへ。

この「スクリーン・ディレクション」の大切さ、といいますか画面整理するにあたっての特効具合といいますか、そういう概念〈ルール〉を『ネト充のススメ』に見つけた(気になった)ので、こないだの記事への補足説明がてら自戒的勉強がてら、「ディレクション」とはなんぞや──なんて主旨を少しだけ文章化してみます。試みます。

能登かわいいよ能登。

右向け、左!(読み飛ばしてオーケー!)

ディレクションとは「方向」の意味であって、馴染みのあるところだと「ディレクター」とかで使われますね。プロジェクトの舵を取る/方向性を定める、そんな感じです。(大雑把

その「方向:スクリーンディレクション」が画面のなかでどういう役割と効果を持っているかという話ですが、

「○○がほにゃららするときは一定の方向を向いている(べきである)

といった画面整理のためのガイドルールがあります。
絶対規則ではないですが、一手間入れることですごく見やすくなります。

カメラを例えにして考えてみましょう。

例)戦場での撮影

人物が入れ乱れてしっちゃかめっちゃかになるような戦場でのシーンを撮る場合、
自軍が右に向かって攻めるなら、敵軍は左に向かって攻める(べきである)。

関ヶ原の戦いを映像化したとしましょう。

石田軍が右攻め、徳川軍が左攻めの構図だとしましょう。西軍と東軍ですし。

( 石田軍→ 〈戦場〉 ←徳川軍 )

兵士がみんな同じような格好、兜などで顔の判別もつかないような状態だと誰が誰かわからない。そこで、「石田軍の人間は右に攻める=右に攻めているのは石田軍側の人間」というルールを設ける。これがディレクションによる整理術。

例)バスを待つ男

通勤なんてものは大体が繰り返しですから、その行為には同一性を持たしたい。

通勤時:右からバスがフレームインする。カメラ-FIX

退勤時:左からバスがフレームインする。カメラ-FIX

これで会社は画面の右側にあるように観客は想像し、左側に家があるのだと想像する。そんな副次的な効果も期待できる。

グループ化による整理

上の例題ふたつのように、

  1. 同一の立場や行動をする人物が複数いる場合
  2. 同様の行動を複数回おこなう場合

これらのディレクションは、グループ化したほうが画面はきれいに整理され観客もすっと状況を理解できる。(※あくまでセオリーのひとつとして、ですが)

一旦フラットにグループ化することで、イレギュラーへの誘導も簡易になる利点もある

「バスのフレームインの速度がおかしい/対向車線から男を撮る」など、配置を変えたり別のアングルで撮ったりすることで「いつもと違う」が演出できることになりますから。「右を向いて攻めていたのに左に攻めるような回り込みのカットを入れる→裏切る」こんな感じ。

けっこう便利。

──。

これがスクリーンディレクションを念頭に置いたキャラクター配置やカメラ配置の基本的な部分。(※これを踏まえたうえでのフェイク/ミスリードも存在する。やっかい)

『ネト充のススメ』における S・ディレクション

さきほどの「方向の統一」が本作ではどの部分でなされているのか。サムネイルのとおり、リアルワールドにいるプレイヤーがゲームをしているときです。MMO外にいる”中の人”を撮るとき、ですね。

ネト充のススメ ディレクション
『ネト充のススメ』各話より引用/加工

中の人たちがプレイしているときは、全員が左を向いている。(ドラマ『電車男』のチャット描写とかどうなってたっけなぁ)

5話までで”@家パーティ”の面々の中の人の顔も明らかになってきていますが、偶然部屋の配置が左から撮りやすいようになっていたわけではない。意識的な配置である。この点に注目。

PCの肩越しショットが比較的多く、次いで真横から、ときたま真後ろや正面からもキャラクターを撮るが、右か左かで分類すれば、基本的には左向きだ。逆ぐぬぬ。

こうすることで彼女たちはゲームの外側の人間であるということがすぐにわかる。

MMOキャラを通じての会話がメインである本作ですが、MMO内のキャラクターの発言に中の人がダイレクトな反応を映す、といったカットのつなぎも少なくない。リリィさんの発言に森子自身がトキメく、みたいな。リバースショット風味のつなぎ。

この場合も中の人の向きは基本的には左なので、それを見越して発言者は右を向いた状態で発言する配置にするか、右を向いていない状態から中の人の部屋に飛ぶなら後ろから中の人を撮るか、など計算されたつなぎ方になっている……、感じがする。(未検証)

(※人物の配置関係がわかりやすい引きの画などの場合は除く)

もうひとつリアルとゲーム内のキャラクターの線引として、リアルのプレイヤーはなにかと地味だ。クラウドやスコールみたいなゲームキャラじみたのが現実にいられるとそれはそれで困るけれども。

相方になりたいんです の3話

「ああ、丁寧な仕事だな」としたり顔で観直していたら3話で逆向きのシーンがありました。法則破れました。心なしショック。

『ネト充のススメ』第3話

↓↓

『ネト充のススメ』3話
ともに『ネト充のススメ』第3話より

リリィさんに相方になりたいと告白されるシーンです。キュンキュインしましたね。蝶々が舞い飛んでいくのがうっすら見えました。

この逆向きがイレギュラーへの誘いなのかどうか。どう理解すれば筋を通したまんま心が傷つかずに済むのか、考えてみたんですけど、うまく納得できなくて……。
リリィさんが左向きだったので、リバースショットに準じた撮り方なら、

  • 森子は右を向いているのが筋ではある。
  • ──が、基本法則を取っ払ってまで森子を右向きにする意図は?
  • いちど林を挟んでから左向きの森子ではいけなかったのか?
  • そもそもリリィさんを右向きに立たせておけば、とか……。

色々と思うところはあります。

で、思いついたのが、

『何か大事〈おおごと〉なことを告げようとしているリリィさんを前にして、森子は林のプレイヤーであることを忘れ、完全に林と同一化してしまったのだ説──』

……。

弱い。弱いけど他に思いつかない以上、残された選択肢がどんなに云々……。

だからここは、山場的な? ターニングポイント的な? そういうアクセントとして逆撮りが選択されたのではないだろうか。書いてて苦しい!

視聴その後……追記

3話にはもうひとつ俯瞰ながら右側から撮ってるのがありました。

『ネト充のススメ』3話

わりと平板なシーン。もうだめだ、辻褄が合わない。途中までうまく言えてる手応えがあったのに……。

さらにその後、第6話にて櫻井さんががっつり右向きでPCを操作しているカットがありました。

ネト充のススメ6話
『ネト充のススメ』第6話より

もうほんとに……いままでの私の分析()はなんだったんだろう。
恥ずか死んじゃうのはこっちですよ! と言いたい。

で、また往生際悪く考えたんですが、

「彼(彼女)はゲーム外にいる”プレイヤー”ですよ」という認識が観客に十分伝わったのならディレクションのルールから弾いても問題ないよね? 

……とこんな線引がなされているんじゃないでしょうか?

ずっと同じ向きで固定するよりは、アングルに変化を持たせると描き方の幅も広がりますし、よりキャラクターの愛らしさが引き出せるんじゃないでしょうか? ね? ね?

そんな感じで〈『ネト充のススメ』で改めて考える「スクリーンディレクション」の効果〉でした。

おしまい。

by カエレバ

OPもEDも映像も楽曲もすべてがいい。


【参照リンク】

アニメ『ネト充のススメ』公式サイト
http://netoju.com/close

comico内『ネト充のススメ』のページ
http://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=27